セクハラ・パワハラ許さない!

セクシャルマイノリティの労働相談に向けて~プレカリアートユニオンの実践に学ぶ~を開催

【活動報告】学習会『セクシャルマイノリティの労働相談に向けて~プレカリアートユニオンの実践に学ぶ~』を開催しました
誰もが自分らしく、お互いを尊重し合える労働組合づくりをめざして

  • 日時: 2026年5月30日(土)18:30~20:30
  • 主催: なかまユニオン
  • 講師: Sally(サリー)氏(プレカリアートユニオン執行委員/一般社団法人TransgenderJapan理事)

なかまユニオンは2026年5月30日、セクシャルマイノリティ当事者が直面する労働問題への理解を深め、すべての労働者が互いを尊重し合える組織づくりをめざす学習会『セクシャルマイノリティの労働相談に向けて~プレカリアートユニオンの実践に学ぶ~』を開催いたしました。当日は多くの組合員や関心を持つ市民が集まり、具体的な事例や先進的な取り組みをもとに、活発な議論と意見交換が行われました。

性の多様性と「SOGI」をめぐる基礎知識

学習会の前半では、性の多様性を理解するための基本的な概念について整理が行われました。近年広く浸透している「LGBTQ+」という言葉が特定の少数派を指す総称であるのに対し、本学習会では「SOGI(ソギ)」という概念に重点が置かれました。SOGIとは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとった略称であり、多数派も含めた「すべての人」に関わる性のあり方のグラデーションを意味しています。

性の多様性は、身体の性的特徴(Sex Characteristics)、自分の性をどう認識するかという「性自認」、どのような性に惹かれるかという「性的指向」、そして服装や言葉遣いなどで性をどう表現するかという「性表現(Gender Expression)」の4つの要素から構成されています。これらは単純に二者択一で割り切れるものではなく、一人ひとりが異なるグラデーションを持っています。マジョリティ(多数派)かマイノリティ(少数派)かに関わらず、すべての人が独自のSOGIを持っているという共通認識に立つことが、労働相談や職場環境の改善を考える上での出発点となることが強調されました。

LGBTQ+の労働問題は「特別な問題」ではない

本学習会のメインスピーカーであるプレカリアートユニオン執行委員のSally氏は、長年の実践を踏まえ、「セクシャルマイノリティの労働問題は、決して特殊な問題ではない。ユニオンが日常的に扱っている普段の労働問題と、本質的にはまったく同じ構造である」という力強いメッセージを投げかけました。

報告では、性的マイノリティの労働者が職場で直面する困りごととして、①呼称や性自認・性的指向の扱い、②採用・配置・昇進での不利益、③アウティングやカミングアウトの強要、④メンタルヘルスと休職・復職の問題、⑤福利厚生・制度の不備、⑥職場文化や無理解による孤立、という6つの領域が挙げられました。一見するとこれらは当事者特有の課題のように見えますが、その本質を紐解くと、私たちが日々取り組んでいる既存の労働問題と深く結びついていることが分かります。

たとえば、本人の性自認を無視した呼称や差別的な言動は、女性労働者に対する不適切な呼び方や、個人の障害・病気、国籍などをからかう行為と同様に、個人の人格や尊厳を否定する「パワーハラスメント」そのものです。また、採用や昇進での不利益は非正規雇用労働者に対する差別や不公正な扱いと同じ構造であり、アウティングは重大なプライバシー侵害や個人情報漏洩に該当します。福利厚生の不備も、社会の変化に対応できていない旧態依然とした家族手当制度などの温存、すなわち対象者間の待遇格差という労働問題にほかなりません。セクシャルマイノリティの課題を「特殊化」して特別視するのではなく、既存のハラスメントや権利侵害の延長線上にあるものとして捉えることの重要性が示されました。

SOGIハラ労災認定事例から学ぶ闘い方

学習会では、プレカリアートユニオンが実際に解決へと導いた具体的な労働相談の事例が詳しく紹介されました。それは、性自認は女性であるトランスジェンダーの労働者が、職場で凄惨なハラスメント(SOGIハラ)を受け、うつ病を発症して労災認定に至ったケースです。

当事者の労働者は、管理職社員から公の場で執拗に「彼」と呼び続けられるなど、人格を否定される言動を繰り返されました。さらに「女として扱ってほしいなら、さっさと手術でも受ければいい」といった身体的自己決定への介入や、「女性としての心遣いをしたらどうか」というジェンダー役割の押し付けが行われ、最終的には人間関係の悪化を理由に業務から外されるという孤立化に追い込まれました。企業内の労働組合(いわゆる御用組合)に相談しても対応してもらえず、精神的に追い詰められた労働者は不眠や希死念慮に襲われ、約2年半の休職を余儀なくされました。
回復後の復職交渉において、会社側はハラスメント加害者が籍を置く元の部課での復職を提案し、労働者が難色を示すと、今度は遠方(三重県いなべ市)の事業所への転勤を伴う復職を迫るという、さらなる不利益を強いました。就業規則による休職期間満了に伴う解雇が迫るなか、労働者はプレカリアートユニオンに加入しました。

ユニオンは「休職の原因は会社側のSOGIハラにある。多大な負担を強いるべきは被害者ではなく、異動させるなら加害者であるべきだ。また元の事業所での復職先が見つからないのは会社都合である」と論理的に主張を展開しました。そして、労働組合が持つ最大の武器である直接行動や社会化(世論への訴え)を背景に粘り強く団体交渉を重ねた結果、転居を伴わない別部署への復職を勝ち取りました。さらに、復職を希望してから実際に復職するまでの期間の給与支払い、実質的な問題解決のための解決金の支給を認めさせ、その後に申請した労災も無事に認定されました。この事例は、当事者が録音などの証拠をしっかりと残していたこと、 trenches(現場)でユニオンが組合の武器を最大限に活用して毅然と闘ったことが、勝利をもたらす決定打となったことを証明しています。

相談の現場で「心理的安全性」を担保するために

性的マイノリティの労働問題は、性自認や性的指向が極めて機微な個人情報であるため、当事者が周囲に相談しづらく、無理解が積み重なって孤立を深め、問題が深刻化しやすいという特徴があります。だからこそ、労働組合自身が当事者にとって安心して相談できる場所、すなわち「心理的安全性」が担保された空間であることが求められます。プレカリアートユニオンが2015年頃から「LGBT労働相談」を前面に打ち出すきっかけとなったのも、身近な組合員にトランス女性がおり、日常的な交流を通じて男女二元論的な社会構造の課題を実感したからでした。

ユニオンが相談者との信頼関係を築き、心理的安全性を提供する
ための具体的なアプローチとして、以下の4つのポイントが提示されました。

  1. 視覚的シグナル: 事務所内にレインボーフラッグを掲示したり、ウェブサイトで「LGBT労働相談対応」と明記したりすることで、当事者が「ここは安全な場所だ」と一目で理解できるようになります。また、加入届の性別欄を撤廃、あるいは任意記入とすることも有効な意思表示です。
  2. グラウンドルールの周知と守秘義務の徹底: 会合や相談の冒頭でプライバシー保護などのルールを読み合わせ、デリケートな情報は「執行部のみの共有」として鍵付きの棚で管理するなど、情報漏洩を防ぐ徹底した体制が不可欠です。
  3. 日常の言葉遣いの見直し: 「奥さん」「旦那さん」「彼氏」「彼女」といった性別を決めつけた表現を避け、日頃から「パートナー」というニュートラルな言葉を使用すること、また「ふつうは~だ」という固定観念に囚われた規範的な物言いを排除することが、相談者を傷つけないための基本となります。
  4. 社会的イベントへの積極的な参加: 各地で開催されるプライドパレードやレインボーフェスタに組合として参加し、当事者を応援する姿勢を社会的に示すことが、信頼の構築につながります。

全国どこでも安心して相談できるネットワークへ

現在、セクシャルマイノリティの権利回復をめざすプライドパレードやデモ行進は、休止中も含めて全国53団体・57ヶ所以上で開催、または開催が予定されています。これは、性的マイノリティ当事者が全国のあらゆる地域に必ず一定数存在していることを示しています。

しかしその一方で、LGBTの労働相談を公式に受け付けることを掲げ、具体的な解決実績を公表している労働組合は、プレカリアートユニオンや総合サポートユニオンなど、全国的にも極めてわずかなのが現状です。地方の当事者から相談が寄せられた際、自信を持ってバトンを渡せる地域のユニオンが限られているという課題があります。

今回の学習会は、私たちなかまユニオンにとっても、自らの相談体制や日頃の意識を見直す大変貴重な機会となりました。LGBTQ+の労働問題は特殊なものではなく、普段のハラスメント闘争と同じであり、人権を軽んじる企業に対して労働組合の持つ武器を最大限に活かして立ち向かうべき課題です。全国どこに暮らすセクシャルマイノリティであっても、職場で理不尽な差別に直面したときに、地元のユニオンへ安心して駆け込める社会をつくらなければなりません。なかまユニオンは、これからも誰もが自分らしく尊厳を持って働ける社会の実現に向け、学びを深めながら、共に闘う仲間を全国に広げていく決意です。

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