労働組合でできること
様々な職場の悩みや要求・希望は、労働組合(ユニオン)の力を使って、解決、実現することができます。
労働組合は、労働者ための労働者の自主的組織です。労働組合を作ったり、労働組合に参加することは、憲法や労働組合法で認められています。労働組合は、様々な力を持っています。
会社に法律を守らせる
「有給休暇はない、と会社に言われた」「終業のタイムカードを押してから、仕事をさせられる」「仕事中にケガをしたのに、健康保険で医者にかかってくれと会社に言われる」、このような相談がよく寄せられます。これらは、全て法律違反です。
労働基準法では、半年勤務すれば10日間の有給休暇の権利が発生します。1日8時間、週40時間以上の労働は禁止です。それ以上の延長労働には協定と割増賃金の支払いが必要です。業務中のケガや病気は労災保険の適用がされます。
ところが企業にすれば、法律を無視した方が経費をカットし、利益を増やすことができるので、誰かがそれを問題にしなければ、法違反はなかなか改められません。
労働基準法違反を取り締まるのは労働基準監督署ですが、現場から労働者の申告がなければ労基署が知るよしもありません。労働者が法違反を申告しても、企業から報復を受けないようにしなければなりません。労働者個人で申告するのではなく、労働組合が組織的に企業の法違反を指摘し、是正を求める活動が必要です。
労働条件の改善をする
最低限の労働条件は、労働基準法に定められています。最低賃金は最低賃金法で決められています。しかし、それらは最低の基準であり、十分なものではありません。もっとよりよい労働条件を誰しも追求します。しかし、「毎年賃金を上げなければならない」という法律はありません。法律頼みにはできないのです。「賃金を◯円にして欲しい」「休暇を◯日与えてほしい」と、労働者が経営者に要求し交渉するほかないのです。
労働者が一人で交渉しても経営者は見向きもしないでしょう。しかし、その職場の労働者がまとまって要求を出して交渉し、「これをのまなければ仕事をしない」と行動すれば、経営者も譲歩せざるをえなくなるでしょう。これが、労働組合の重要な役割です。
労働者の生命と健康を守らせる
労働者は、仕事中は、会社に指定された場所で、会社の指揮命令に従って働かなければなりません。職場がケガしそうな危険な箇所があり健康上好ましくないような環境であっても、労働者が自由に職場を離脱することは許されません。しかし経営者は、職場環境を不断に点検して危険個所の除去や職場環境を良好に保つようにしなければなりません。
また、職場環境に問題がなくても、長時間労働や過重労働を強いられれば、健康を損ね事故の危険性が高まります。未だに過労死は後を絶ちません。経営者は労働者の安全や健康を維持するために労働時間や労働の中身を点検しなければなりません。労働者が十分な休養や休暇が取れるようにしなければなりません。
利益追求を第一の目的とする企業に任せておいたのでは、労働者の安全やメンタルも含めた健康は、守られません。労働組合こそその役割を果たすことができます。
雇用を守る
労働者が長期的な人生設計をするためには、雇用の安定が必要です。経済情勢や経営状況は常に変化しますが、安易に雇用が奪われてはなりません。一人の労働者が解雇や退職勧奨によって雇用が脅かされる場合にも、団体交渉で解雇の撤回を求めることができます。
集団的な希望退職募集や整理解雇の提案などの場合でも、労働組合で交渉し、闘うことで、雇用を守ることができます。
パート、派遣、嘱託社員などの不安定な有期雇用の労働者についても、労働組合の力によって、無期雇用化や正社員化などに取り組むことができます。
働く場(職場)を守る
企業が吸収合併されたり倒産するような場合でも、労働組合の力で雇用と労働条件を守り、企業倒産を防いだり、労働組合主導で企業を再建したりすることができます。会社から資産などを譲り受けて、労働組合が自主的に企業を運営する場合もあります。
パワハラや差別を許さず人権を守らせる
成果主義の強化によって、労働者はバラバラに分断され競争させられる場面が増えています。ノルマの強制は、パワハラが発生しやすい職場環境を醸成しています。また、人件費を削減するため企業が非正規社員を導入し差別的に処遇していることは、差別意識を助長することにもなっています。
パワハラに対しては、ひとつひとつの事例について、事実関係を明らかにして救済措置を企業に求めていきます。また、企業経営者がパワハラを許さないメッセージを打ち出すこと、全社員に対するパワハラ防止研修を行うことなどの対策を求めます。より根本的な解決に向けて、企業の差別的人事政策の改善を求めていきます。正規と非正規の均等待遇の実現、公正な人事評価制度、過重なノルマの押し付けの廃止などです。
それは、企業のあり方そのものの変更を求めることであり、労働組合の取り組みなしでは達成できません。
職業訓練・成長の機会の保証
職業生活を送る上で必要な知識や技能を習得する機会を与えられなければなりません。
以前は、新入社員を採用して企業の中で研修し、実際の業務を通じて先輩や上司の指導の下で経験を積んでいくのが一般的でした。
現在は、企業は即戦力を求め、個人間の競争をあおり、労働者の個人的努力に期待する傾向を強めています。
労働者の職業能力の高まりや資質の向上によって、利益を上げるのは企業であり、企業や業界団体に対して職業教育訓練の機会を要求していくのも労働組合の活動の一つです。
企業の社会的行為を監視し、社会的役割を果たさせる
企業は、自社の利潤の拡大を第1の目標として活動します。
利潤を拡大するには、例えば食品製造業では、安価な材料と製造方法で製品を作り、高く売れば利潤は拡大します。
劣悪な材料に危険な食品添加物を配合すれば、消費者の健康に直接的な影響を与えます。
製造過程で出る廃液などを処理せずにたれ流せば、地域の環境を汚染します。
企業が行う企業活動は、何らかの形で社会に影響を与えざるをえません。
社会に悪影響を与えないように監視しなければなりません。その企業の活動を熟知しているのは、企業で働く労働者であり、問題があれば、それを指摘し是正させなければなりません。
それは、労働者個人が担うには大きすぎる課題であり、労働組合こそが自分たちが働く企業や産業を監視している役割を担わなければなりません。
阪神淡路大震災の時、高速道路の橋脚が倒壊しましたが、そのコンクリートの中にはゴミが混入するなど、極めて劣悪なコンクリートであることが判明しました。
生コン産業の労働組合は、市民の安全を守るため、劣悪なコンクリートで工事をさせないようなパトロール活動を続けています。
また、製薬会社の労働組合は、発癌性の疑いのあるデータを隠蔽して新薬の申請をしようとする会社を厚労省に告発し、新薬の販売許可をストップさせました。
このような活動が労働組合に期待されていると言えるでしょう。