テーマ別の対処法 パワハラ

これはパワハラ?

「これは、パワハラでしょうか?」そういう相談を受けることが多いです。

被害者自身が、パワハラをパワハラと認識できない場合も多いのです。
「注意や叱責やクレームを言われているけども、私が悪いのだろうか?」と、自分の責任だと考えたり、自分に自信を無くす人も多いです。

仕事の事を考えたり、職場での人間関係で、怖くて心臓がどきどきするとか、苦しいとか、というような場合は、正常な業務上の問題というより、不当なハラスメントを受けている可能性があります。

パワハラは増えている

職場でのハラスメントの相談が増えています。もともと成果主義賃金の導入によって、職場での労働者が協力して仕事をするより、一人一人がバラバラにされ競争が激しくなっています。また、慢性的な人手不足状態が続く介護職場では、過重な仕事が労働者に課され、精神的余裕がありまません。加えて、最近の経済情勢の悪化の中で、先行きが分からない企業も多くなっています。労働者のストレスは、高まっており、そのはけ口が他の労働者に向けられる場合も多くなります。

経営者は、人員を削減する際に、解雇をするより、嫌がらせをして、自主的に退職するように仕向ける場合も多くあります。

部下からのパワハラもある

2020年6月施行(大企業。中小企業は2024年4月1日)のパワハラ防止法(労働施策総合推進法)では、

  1. 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)
  2. 業務の適正な範囲を超えて
  3. 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

の3つとも当てはまる場合をパワハラと定義しています。

「優越的関係」というのは、上司―部下というような上下関係だけでなく、知識や経験や人間関係他の優越的関係も含まれます。職歴が長い古参社員が管理職より威張っていたりするような例です。上司からのパワハラもありますが、同僚からのパワハラ、部下や後輩からのパワハラもあるのです。

6類型

定義に従って、どういう行為がパワハラにあたるのか、6つの行為類型が報告されています。それは、

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

という6つです。

注意しなければならないのは、このパワハラ防止法の定義や6類型に当てはまらないからと言って、パワハラではないというわけではないことに注意が必要です。セクハラの場合と同様に、職場において「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者」は、民法上の不法行為責任を問われることになります。直接の行為者は、「不法行為責任」を問われ、会社は、「使用者責任」「職場安全配慮義務違反」を問われます。

相談と記録

パワハラを一掃するためには、まず、記録、証拠を残すことが重要です。パワハラの加害者は、パワハラをパワハラと思っていない場合もありますし、自覚があっても、パワハラの事実を否定することがほとんどです。パワハラの事実を認めさせなければ、解決はしませんが、そのためには、記録、証拠が必要です。身体的攻撃なら病院で受診し、写真を撮影するなどして、証拠を残します。それ以外のパワハラについては、なるべく詳細なメモや記録を作ります。一人でメモを作るのが大変なら、誰か心の許せる人に、詳細なメールを送ります。暴言などは、ICレコーダーで秘密録音をします。決定的な証拠になる場合があります。録音に相手の許可は求めません。何かが起こってからスイッチを入れるのは難しいので、朝スイッチを入れて録りっぱなしにし、退社後必要部分をPC等に保存します。

録音をしていることは、絶対秘密です。録音がバレると人間関係を悪化させたり、個人情報保護違反や職務専念義務違反で会社から処分される可能性もあります。録音の使用方法は慎重に検討が必要です。

その他、証拠作りの工夫が必要です。

パワハラ一掃は、会社の責任

パワハラをするのが個人であっても、その個人がパワハラを行う原因は、過重なノルマや人員不足など会社の方針や施策にあることが多いです。
そういう場合は、加害者と対決してもパワハラは解決しません。

また、会社は、労働者がメンタル面も含めて、安全で健康な状態で働けるように職場環境を整備する「安全配慮義務」があります。会社の責任でパワハラを解決するように求めて行きましょう。

基本的な流れとしては、パワハラの事実があるのか、事実確認、加害者の配転や指導や処分などの再発防止策の実行、被害者への会社の責任でのケアということになります。
しかしこれだけでは不十分で、社員全員の意識改革のためのパワハラ防止研修など啓もう活動、経営者のパワハラ決別宣言なども取り組む必要があります。
さらには、ノルマなど業務全体の見直しもするべきです。

2020年6月施行(大企業。中小企業は2024年4月1日)のパワハラ防止法(労働施策総合推進法)では、セクハラ対策と同様に

  1. 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  2. 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
  3. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  4. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

を定めています。

精神的打撃が大きい場合

パワハラが原因で適応障害やうつ病など精神疾患を発症し就労できなくなる場合があります。
その場合は、まず、治療に専念できる条件を作ることが大事です。

まず、健康保険で治療し、健康保険の傷病手当で最低限の生活費を確保します。
傷病手当は賃金の6割、最長1年半という期限があります。
傷病手当を受給しながら、労災保険の申請が可能かを検討します。

会社に対する裁判も

前記のように、パワハラを発生させるのは、会社の安全配慮義務違反です。パワハラ被害者の被害が甚大な場合、不法行為の損害賠償を請求することになります。

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