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サービス残業

残業代を取り戻そう

労働基準法は、1日8時間週40時間以上の労働を禁止しています(例外あり)。これを超えて労働者を働かせるには、会社は労使協定書を労基署に届け出る必要がありますし、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
残業代が支払われていなければ、2年前に遡って支払わせるができます。請求にあたっては、証拠や証言が重要です。何時に出勤し何時に退勤したか、タイムカードの写しやパソコンのログなどの証拠を作ります。毎日出退勤の時刻をメモしておく事も有効です。時刻を示すメールのやりとりや通勤に使っている電車のICカードから改札を通過した時刻の記録を引き出すこともできます。最近は、携帯のアプリもあります。
完全な証拠が無くても諦めることはありません。過去の相談事例でも、資料は完璧ではありませんでしたが、団体交渉を申し入れ、資料提供を求めて、会社が出して来た資料で正確な金額を再計算して請求しました。
働いた分の賃金を請求するのは当然の権利です。支払わないのは犯罪です。キチンと支払わせましょう。

始業前の労働も残業

残業は、就業時間を経過した後にするばかりではありません。始業の前に、朝礼をしたり、ラジオ体操をしたり、上司の指示や慣行で掃除や仕事の準備をする場合も残業(時間外労働)です。さらに、作業服に着替えたりする時間も労働時間にカウントするので、始業前に行う場合は、その時間も残業(時間外)時間です。
休憩時間に働いているとしたら、その時間も時間外労働として、時間外手当が発生します。
経営者は、労働者を6時間以上働かせる場合は45分、8時間以上働かせる場合は1時間以上の休憩を労働者に与えなければなりません。休憩時間に休めないとしたら、それは休憩ではありません。
最近の相談事例でも、規則では1時間の休憩を取ることになっていても、実際はまともに休憩時間を取れないという相談がありました。大体の記憶やメモを元に休憩時間に働いている時間を算出して、時間外手当を要求して、団体交渉で、休憩時間に働いていた分の賃金を支払わせました。
始業前、休憩時間といえども、働いた分の賃金を請求するのは、当然の権利です。諦めず請求しましょう。

1分単位、実態に即して

「残業代は、30分を過ぎないとつかない」という会社がありました。30分間はタダ働きで、31分から残業代が支払われるというのです。また、残業代は15分単位で計算するという会社もありました。しかし、これらは違法です(15分単位に切り上げる場合は別)。
残業代は、1分単位で計算しなければなりません。
また、残業は承認制になっていて、事前に届け出て承認された時間しか残業と認められないけれども、実際には業務量が多すぎて、承認された時間を超えて残業せざるをえないという会社がありました。
会社には実際の労働時間を把握する義務があります。実際の労働時間を把握しようとしない会社の態度は違法です。
残業代は、書類上の時間数ではなく、実際の残業時間に支払われるべきです。労働者としては、本当の残業時間と残業中の業務内容を記録し、正当な残業代を請求しましょう。

残業代を取り戻す方法 ①

残業代を取り戻すには、準備が重要です。何時から何時まで働いていたか、証拠が必要です。そして、残業代が払われていないという証拠も必要です。これは、給与明細があれば大丈夫です。
完璧な証拠が無くても、交渉でデータを出すように求めたり、概算で請求したりすることもできます。
次に、資料に基づいて、毎日の始業時刻、終業時刻、休憩時間などを整理し、1日あたり不払いとなっている残業時間を算出し、1ヶ月分を合計し、元となる賃金から時給を計算してさらに割増の時給を計算して、残業時間を掛けて、不払いとなっている残業代の1ヶ月の合計額を算出します。
そして、会社への要求額を決めますが、残業時間の請求時効は2年ですが、会社が2年分以上の残業代を任意に払っても構いませんから、最初から要求を2年に限定する必要はありません。
次に会社に要求書を提出しますが、在職中であれば、個人で要求するより集団で、即ち職場に労働組合があればその労働組合の取り組みとして、なければ労働組合を結成するか地域の労働組合に個人加盟して、労働組合として交渉するのが得策です。
なぜなら、不払い残業を生み出すような職場の体制そのものを変えた方が良いからです。また、正当な行為であっても要求をしたことで何らかの不利益を受けることが無いようにした方が良いからです。

残業代を取り戻す方法 ②

退職後に請求することも可能です。実際の相談でも、退職してから残業代を請求するという事例が多いです。退職後でもユニオンに加入して、交渉を申し入れることは可能です。
在職中でも退職後でも、不払いの残業代を請求し、交渉が開催されたら、会社の保有する資料の開示を求め、こちら側の請求の根拠を示し、支払を求めます。労働者に残業を命じるには、残業時間の上限や理由を定めた労使の協定書(36協定)を労基署に届け出ることが必要ですから、この協定の提出を求め適法な残業であったかも確認します。
この段階で話し合いがまとまれば終了ということになります。
交渉が長引く場合は、2年の時効に注意しなければなりません。請求権が消滅する前に、次の手を考えなければなりません。
残業代の不払いは、労働基準法違反ですから、職場の近くの労働基準監督署に違反を申告し、労基署からの指導を要請します。残業代の不払いは、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金の刑事罰が科されますから、悪質な経営者には刑事告訴をします。
司法手続きとしては、不払いの金額が60万円未満なら、簡易裁判所への少額訴訟、それ以上なら労働審判や訴訟を起こすことになります。
悪質な経営者に対しては、司法手続き任せにせず、記者会見や抗議集会や宣伝行動等で、広く社会問題として世に問うことが必要です。

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