2026年4月28日、私たちは韓国女性団体連合を訪問し、日韓のジェンダー平等をめぐる現状と課題について深い交流を行いました。今回の訪問は、日本で労働運動を展開するなかまユニオンと、韓国の女性運動を牽引する「韓国女性団体連合」が、国境を越えて連帯を深める貴重な機会となりました。以下にその詳細な報告をまとめます。
日韓の連帯と労働組合のアップデート
交流会の冒頭、日本側からは地域労働組合としてのジェンダーへの取り組みについて報告しました。日本の労働運動は依然として男性正社員中心の文化が根強いですが、なかまユニオンではこれを「アップデート」すべき重要な課題と位置付けています。具体的には、職場でのセクシュアルハラスメントに対する徹底的な抗議行動や、組合内での無意識の偏見を解消するための学習会、さらには多様な属性の人が安心して参加できる「グランドルール」の策定など、組織そのものを変革する試みを続けています。特に、韓国の力強いフェミニズム運動やデモのあり方からは多くの刺激を受けており、日本の運動現場でも韓国流の表現方法や抗議のスタイルを取り入れる動きが広がっていることを伝えました。
韓国女性団体連合が直面する現代の課題
続いて、韓国女性団体連合より、現在の韓国社会における運動の焦点について詳細な報告がありました。現在、韓国の女性運動は非常に多角的な課題に直面しています。
まず大きな柱となっているのが、経済的格差の是正です。韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で男女の賃金格差が最も大きいという現状があります。この構造的な問題を解決するため、団体連合は「性平等賃金公示制度」の導入を強く求めています。これは、企業に対して性別による賃金実態を公表させることで、不当な格差を可視化し、是正を促すための制度です。また、ケア労働の価値を正当に評価し、女性に偏っているケアの負担を社会全体で分かち合うための政策提言も継続的に行われています。
次に、身体的な自己決定権の保障が重要なテーマとして挙げられました。2019年に韓国では「堕胎罪」に対して憲法不合致の判決が下されましたが、その後の代替立法の整備が遅れているため、現在も安全な妊娠中絶へのアクセスが不安定な状態にあります。団体連合は、医療現場での混乱を避け、すべての女性が安全に医療を受けられる体制を整えるための法整備を急ぐよう政府に働きかけています。これと並行して、あらゆる形態の差別を禁じる「包括的差別禁止法」の制定に向けた活動も、マイノリティ団体と連携して強力に進められています。
デジタル・AI時代における新たな差別への警戒
韓国側の報告で特に印象的だったのは、急速に発展するAI技術とジェンダー、そして人権の問題です。韓国政府は現在、AI産業を国家的な重要分野として推進していますが、そこには大きな死角があると団体連合は指摘します。
例えば、AIチャットボットが女性やマイノリティに対して差別的な発言を学習してしまったり、ディープフェイク技術が悪用されて性暴力の道具となったりする事例が相次いでいます。また、採用AIが女性の経歴を不当に低く評価するアルゴリズムの問題も深刻です。団体連合は、技術の進歩が既存の差別を再生産したり、新たな抑圧を生んだりしないよう、開発段階から人権とジェンダーの観点を取り入れる「AI人権ガイドライン」の策定と監視を重要な運動課題として位置付けています。さらに、介護現場や製造現場へのロボット導入が女性労働者の雇用を奪うだけでなく、管理・監視を強化する手段にならないよう、労働の質の確保についても注視しています。
政治情勢と右傾化への懸念をめぐる質疑
質疑応答の時間には、日韓両国の政治状況と、それが女性や若者に与える影響について熱心な議論が交わされました。
韓国側からは、日本の政権に対する関心が寄せられました。特に、初の女性首相を目指した高市氏が、なぜ一部の若者から支持を集めているのかという問いがありました。日本側からは、彼女がSNSやYouTubeを駆使して「古い政治を変える」という新鮮なイメージを演出し、保守的な支持層だけでなく現状に不満を持つ層を取り込んでいる実態を説明しました。しかし、その政策の本質が極右的な軍事強化や歴史修正主義に基づいている点については、日本の平和運動や女性運動の立場から強い警戒感を持っており、実際に大規模な抗議活動が起きている現状を伝えました。
一方、日本側からは、韓国の若年層における極右政党への支持や、一部の女性たちが保守的な立場を取る背景について質問しました。韓国側は、急激な経済的停滞と競争社会の中で、若年男性の間で「女性ばかりが優遇されている」という逆差別感情(イデナム現象)が政治的に利用されている側面があると分析しました。また、女性の保守化については、宗教団体、特に保守的なキリスト教会の影響が強く、中絶反対や同性愛反対といった主張が宗教的信念と結びついて運動を阻害している複雑な状況が明かされました。
誰一人取り残さないフェミニズムの実現へ
最後に、現在のフェミニズム運動における「排除」の問題についても議論が及びました。一部でトランスジェンダーを排除するような言説(TERF)が問題となっていますが、韓国女性団体連合は「誰も排除しない性平等」という明確な原則を掲げています。彼女たちは、トランスジェンダーの人権を守ることと女性の権利を守ることは対立するものではなく、共通の家父長制的構造に立ち向かうものであると強調しました。そのため、排除を標榜する団体とは連帯せず、国際女性デーなどの行事においても、すべてのマイノリティが安全に参加できる環境作りを最優先しているとのことでした。
今回の交流を通じて、日韓の状況は鏡合わせのように似ている部分があり、直面している課題の根深さも共通していることが再確認されました。物価高や不安定雇用、そして政治の右傾化という厳しい逆風の中でも、韓国の女性たちは論理的かつ戦略的に、そして何より明るく力強く運動を展開していました。今回の訪問で得た知見と情熱を日本に持ち帰り、私たちもまた、誰もが自分らしく生きられる社会を目指して歩みを進めていきたいと強く感じました。交流会の後は、現地の活動拠点である女性未来センターの案内を受け、市民の力で築かれた運動の拠点としての重みを感じながら、再会を期して交流会を締めくくりました。







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