
2026年5月3日、憲法施行から79年を迎えたこの日、大阪市北区の扇町公園において「輝け憲法!平和といのちと人権をおおさか総がかり集会」が開催されました。当日は、雨が混じる不安定な天候ではありましたが、会場には4500人もの市民が詰めかけ、近年の集会としては稀に見る規模の大きな催しとなりました。集会では、元文部科学省事務次官の前川喜平氏によるメインスピーチをはじめ、地域の市民団体、法曹界、労働組合、そして各政党の代表者らが登壇し、憲法9条の堅持や生存権の保障、監視社会への警鐘など、多岐にわたるテーマで訴えが行われました。
前川喜平氏が語る憲法の原点と「世界の宝」としての9条
集会のメインスピーチに登壇した前川喜平氏は、冒頭で大阪・お初天神近くの店で食した「アメリカンドッグ」に触れ、それを現政権の姿勢に擬えたユーモアを交えつつ、憲法改正を巡る現在の政治状況を鋭く批判しました。前川氏は、現在の改憲論議が「新しい時代のため」と称しながら、実際には戦前の価値観や大日本帝国の理想に戻ろうとする「改悪」であると指摘しました。特に、公務員の憲法尊重擁護義務を定めた憲法99条に言及し、権力を持つ側が憲法を軽視している現状に強い懸念を示しました。
前川氏はまた、憲法9条がアメリカからの「押し付け」であるという言説に対し、歴史的事実を紐解きながら反論を試みました。9条の根底には、第一次世界大戦後の「戦争違法化」という人類の崇高な理想があり、サーモン・レヴィンソンやジョン・デューイといった思想家の影響を受けた国際的な流れがあることを強調しました。また、日本側においても、当時の幣原喜重郎首相(文脈上、発言内の「岸信介」等は誤認と思われる)による提案や、衆議院での審議過程における鈴木義雄議員の修正など、日本人の手によって平和の理念が刻み込まれたプロセスを振り返りました。前川氏は、9条こそが世界の戦争をなくすための「先頭に立っている人類の宝」であり、これを変えるのではなく、いかに生かしていくかが問われていると結びました。
地域から上がるミサイル配備への反対と住民自治の動き
続いて、各地で進む軍事化の実態について、具体的な地域活動の報告が行われました。枚方や交野の市民でつくる「憲法と暮らしを考える会」からは、京都府祝園の陸上自衛隊弾薬庫へのミサイル配備問題が報告されました。登壇したメンバーは、政府による説明が不足している中で、住民自身が一軒一軒を訪問し、チラシを配りながら対話を重ねる「訪問署名」の重要性を訴えました。
報告の中では、地域住民とのやり取りを再現した寸劇も披露され、ミサイル配備が自分たちの日常生活や安全に直結する問題であることを、いかに身近な言葉で伝えていくかという工夫が示されました。こうした草の根の活動こそが住民自治や地方自治の基盤であり、二度と戦争を起こさないという誓いを地域から守り抜く力になると強調されました。
監視社会の脅威とスパイ防止法への法的懸念

法曹界からは、大阪労働弁護団の谷次郎弁護士が登壇し、現在国会で議論されている国家情報会議設置法案やスパイ防止法の制定に向けた動きに対し、法律家の視点から警鐘を鳴らしました。谷氏は、これらの動きが「安全保障」の名の下に、国民のプライバシー権や表現の自由、結社の自由を根底から覆す危険性があると指摘しました。
特に、過去に起きた大垣警察署による市民監視事件などの例を引き合いに出し、国家権力による「想定しがたい」という答弁がいかに信用に値しないかを強調しました。政府から独立した第三者の監視機関がないままに情報収集機能だけが強化されれば、政権に批判的な声を上げる市民が容易に監視の対象となり、社会全体に萎縮効果をもたらすと訴えました。谷氏は、スパイ防止法という考え方が排外主義的な動きと結びつき、軍事力強化政策と相まって「戦争が見えてくる現実的な脅威」となっていると批判し、廃案に向けた連帯を呼びかけました。
生存権の危機と最低賃金の大幅引き上げを求める声

労働団体の代表として登壇した大阪労連の浜直子事務局長は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」が現在の日本で崩壊しつつある現状を報告しました。浜氏は、最低賃金で働く若者たちが「コンビニでおにぎり1個買うのすら躊躇する」「食費を月1万円に抑えようとしている」といった切実な声を紹介し、現在の賃金水準が実質的に憲法違反の状態にあると訴えました。
大阪の最低賃金は改定されたものの、フルタイムで働いても年収は225万円程度にとどまり、物価高騰の中で貧困から抜け出せない実態があります。浜氏は、軍拡に巨額の予算が投じられる一方で、国民の生活が顧みられない政治のあり方を批判しました。憲法を「変える」のではなく、誰もが人間らしく暮らせる社会を実現するために憲法を「生かす」ことこそが政治の責務であるとし、労働条件の改善と最低賃金の大幅な引き上げを強く要求しました。
各政党による連帯のメッセージと今後の決意

集会の終盤には、野党各党の代表者が登壇し、それぞれの立場から憲法を守り抜く決意を表明しました。れいわ新選組の大石あきこ共同代表は、軍事ビジネスを成長産業と位置づける流れを批判し、武器よりも生活の豊かさを優先する政治への転換を訴えました。
立憲民主党の野村いくよ枚方市議会議員は、教育現場の立場から「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンの重みを語り、対話と外交による平和構築の必要性を強調しました。
日本共産党の辰巳孝太郎元参議院議員は、世論調査で憲法9条を守る声が逆転して増えていることを紹介し、国民の世論こそが改憲を止める最大の力であると述べました。
社会民主党のラサール石井幹事長は、憲法は国民が権力の暴走を縛るためのものであるという本旨を確認し、憲法違反の政治を正す必要性を説きました。また、同党の大椿ゆうこ前参議院議員からは、排外主義や差別を乗り越え、多様な人々が共生できる社会を憲法の理念に基づいて作っていくべきだとの訴えがありました。
最後に
参加者全員で「いかそう憲法」「止めよう大軍拡」と書かれたボードを掲げ、扇町公園から大阪市内へのパレードへと出発しました。4500人の市民による整然とした行進は、憲法改正を巡る議論が正念場を迎える中で、平和と人権を求める確かな意思表示となりました。








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