「韓国女性労働者の闘いに学ぶ」(横田伸子さん)の講演をきいて 

 ―関西「業種別ユニオン運動」連絡会第4回例会―         

 8月20日リモートでのご講演を視聴しました。日韓で労働運動の歴史や、法制度の違いはありますが、新自由主義経済の中で女性の非正規労働者の状況は共通する点もあり、そのなかでの下からの働き方改革と横田先生がいわれるように、画期的な女性労働者の闘いに多いに学んでいく必要があると感じました。 

講演で印象に残った点などについて報告したいとおもいます。 

韓国の女性の非正規労働者の状況 

 まず、日本でも同様の傾向はありますが、韓国では非正規労働者と正規労働者の格差だけでなく、男女(ジェンダー)の格差が顕著であることが特徴です。 

韓国の全労働者の約4割が非正規労働者ですが、男性は8割が正規労働者であるのに対し、女性は非正規労働者が約5割を占めます。賃金格差にしても正規を100とすると非正規は58、3(男性58、7 女性49,2)。また男性臨時パート賃金100に対し、女性臨時パートは48.3です。非正規のなかでもジェンダ―格差が大きく女性が低賃金なことに驚きます。このほか保険、有給、組合加入率などで正規・非正規、や男女での格差が大きくあります。 

 こうしたプレカリアス(不安定な)労働者の中でも特徴的なのは、非正規労働者の中で大部分を占める特殊雇用労働者の存在です。これは個人請負労働者として個人事業主 

に分類され、労働者性が認められず、労働者権から排除されています。労働法の保護を受けられず、組合をつくって団体交渉をすることもできません。2018政府統計でも50万人そのうち7割を女性が占めているそうです。 

全国女性労働組合の結成 

 1998年の「IMF経済危機」では大企業の連鎖倒産がおこり、整理解雇や労働者派遣法の導入がされます。その中で女性労働者が真っ先に整理解雇の対象とされ、非正規労働者に置き換えられていったことに対し、既成の労働組合がそれを容認する中で女性の労働者の労働権を守るため、女性労働組合を独自に組織する必要が生まれ、全国女性労働組合が結成されます。企業の枠組みをこえて、業種、職種、地域、失業の有無関係なく働く女性なら誰でも、一人でも加入できる全国単一組織の女性労働組合です。 

活動では二つの戦略がありました。一つは女性非正規労働問題を広く社会問題化すること。もう一つは組織化による勢力拡大です。 

労働相談を重視し、現場の女性の声を聴き、研究者や専門家と連携して客観的な実態調査の実施をして労働実態を根拠に討論会、集会,デモ、座り込みなどで女性非正規問題を世論に訴え社会問題化し、法制度の改善や新法を求めました。女性の声を下から吸い上げる民主的な組織運営。様々な市民団体、労働団体などとの連携を図りました。 

 こうした活動で1999年400人だった組合員が2019年には8500人余になり、労働法の適用拡大や最賃の見直し,直接雇用化、労働条件の改善などの大きな成果がありました。こうした戦略をもった大胆な闘い方に、日本も多いに学ぶべきだと思いました。 

しかし全国女性労働組合の組織化には限界がありました。組合員構成の80%が学歴や資格を有する定着型非正規労働者で、残りは一つの職場で集団的に働く凝集的非正規労働者に限られていました。 

非公式部門ケアワーカーの組織化 

そこで非定着性、非凝集性を帯びている(家事労働者、病院付き添い、ベビーシッターといった特殊雇用の非公式部門ケアワーカーなどの)女性非正規労働者の組織化の試みがでてきました。2008年に老人長期療養保険制度(介護保険制度)が導入され、介護労働の一部は公式部門にくみこまれたが、民間部門の非公式ケアワーカーはプレカリアスな就業です。 

大部分が特殊雇用で労働法制や4大保険の適用除外、法定最賃に満たない低賃金などの不安定雇用です。40代50代の低学歴・中高齢女性が大部分で、雇っているのは家庭や患者家族で労使関係を形成することは不可能でした。 

 1999年に国民基礎生活保障法(生活保護)の制定で、女性労働者会が地域自活センターの運営を委託されケアを中心に失業中の女性に職業訓練,職業あっせんなどのサービスを民主的で共同体的な協同組合形式でおこなっていました。それが前身となり2004年全国家庭管理士協会が設立され、孤立・分散して存在する家事労働者を公的に認めさせ、家事労働者に対する社会的保護装置を作り出す運動を展開します。全家協が斡旋業体となり使用者による搾取のない共同組合形式です。2012年には協同組合基本法が制定され韓国トルポム(ケア)協同組合協議会が設立されます。 

 全国家庭管理士協会の活動としては 労働法により労働者と認定されないために保護が受けられず、労働の価値が切り下げられ、劣悪な労働条件、労働環境下に置かれていることから、女性労働者会や女性団体と共同してILO189条約「家事労働者保護条約」の批准運動、家事労働者特別法制定運動などで世論喚起と社会問題化をはかりました。また家事労働者の専門教育と職業教育を実施し、専門性と熟練によるディーセントワーク化。家事労働の職務分析から家事労働基準表の作成、サービス約款、標準契約書、業務マニュアルの開発公開、家庭管理士(家事労働者)と家庭保育士の民間資格証の導入などです。 

 ケアワーカーの組織化の世界的趨勢は労働組合ですが、韓国では社会協同組合がメインストリーム化していて、全国女性労組と全国家庭管理士協会は相互補完的な連帯連携関係としてとらえられるとのことです。 

  日本では労働法や最賃法などで比較的法制度は整っていますが、非正規労働者の問題、介護や保育の労働者は相対的に賃金、労働条件も低い水準であることが問題となっています。また特殊雇用労働者のように労働者性が認められない働き方も増えていく動きもみられます。個別の職場の労使関係だけでは解決しないことも多く、社会問題化すること、様々な組合、市民団体、専門家などとも連携して運動を進めるという視点も労働組合に求められていると思いました。(江)