社会を変える

ハローワーク離職理由を覆した

1,はじめに

 雇用保険の離職理由について、ハローワークで一旦「正当な理由のない自己都合退職」とされ、2か月の給付制限など不利益を受けましたが、雇用保険審査官に審査を申し立て、1年かかりましたが、決定を覆すことができました。この結果、離職理由が「事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職」に変更され、給付日数も90日から本来の180日に戻され受給することができました。また、認められなかった国民健康保険料の免除も認められ、失業中に立て替えていた手当や国保料も戻ってきました。

 組合員からの報告です。

2,退職に至る経過

不当な懲戒と退職勧奨

 私は、大阪市内の設備管理株式会社の社員として、病院の設備管理の仕事を24時間体制で3年半務めていました。2020年9月30日頃、不正には主張する私を嫌った会社は、突然警備職への転換と配転を命じた挙句に、「機密情報を持ち出した」と言いがかりをつけて、出勤停止の懲戒処分を受けた上に、「懲戒解雇する代わりに自己都合にするから退職願を書け」と退職強要されました。退職を拒否すると「出勤停止」の処分を通告され自宅待機に。処分後は、清掃業務で社会保険もつかないパート勤務への契約変更を押し付けてきました。私が契約変更に応じないと、元の職場へも戻さないまま放置され、賃金が支払われない状態が続きました。

ユニオンで交渉

困った私は、なかまユニオンに加入して、団体交渉で12月15日付での退職と引き換えに不払い賃金を支払う形で、問題を解決しました。協定書を締結する段になって、会社が会社都合退職にすることに頑として応じず、「私が自己都合退職する」との表現が入れられました。事情を説明すれば、ハローワークは「退職勧奨に応じたことによる退職」と判断するだろうと考えていました。

3,離職理由をめぐって

ハローワークの間違った決定

雇用保険の手続きで提出する離職票には、労使双方が離職理由を申告する制度になっています。会社から送られてきた離職票の離職理由欄には、「一身上の都合」とのみ書かれていました。私の方は、ハローワークが分類するところの、「正当な理由のある自己都合」という主旨の申告を行ったつもりです。

ハローワークの方でもいくつかの要件をあげて(例えば、退職勧奨を受けた場合や、給与が85パーセント以下に低下するといったことも含まれます。)、それを満たせば「正当な理由のある自己都合」として給付制限を設けないことになっています。この事は離職票にも書かれているし、ハローワークで配られた雇用保険の手引きにも掲載されています。

 雇用保険の給付制限を巡ってのやり取りで、会社側は当初、三者で交わした協定書を証拠として提出し、私が自己都合退職する事に同意したと主張していました。

 私が主張した事は、私は私なりの解釈で協定書に押印した事、それからそうせざるを得なかった経緯についても、あくまで事実に沿って述べさせて戴いたつもりです。

しかし、宇治ハローワークは、21年2月9日、協定書の文言を根拠にして「正当な理由のない自己都合退職(離職理由番号40)」と決定しました。

審査の申し立て

 このハローワークの決定に納得がいかなかったので、審査を請求することにしました。審査の請求は、該当の処分(この場合は2か月間の給付制限が決定された2021年の2月9日)のあったことを知った日の翌日から3か月以内に申し出ることとなっています。

私は5月6日に審査請求書を雇用保険審査官に提出しました。

その後原処分庁(宇治公共職業安定所長)からの意見書の提出、審査請求人(私)の反論書の提出、更に原処分庁による再意見書の提出、それに対する審査請求人の再反論書の提出という手続きを踏んで行われます。私の再反論書の提出の期限が、9月8日でした。

再反論等は立会審理で述べる事も希望できるとの事で、その事を希望した結果、立会審理が10月19日に行われる運びとなりました。立会審査ではなく、再反論書を提出していれば、その後更に原処分庁の再々意見書が提出されて…という段取りになるので、更に日数がかかったことになります。

立会審査

2021(令和3)年10月19日、京都労働局にて、雇用保険の審査が立会で行われました。原処分庁と審査請求人が意見を尋ねられたのちに、6人の審査参与の方が意見や質問を述べられ、それをもとに雇用保険審査官が決定を下し、後日決定書を関係者に送付することとなります。

参与からの意見

参与の方からは、そもそも「退職の意思表示」が本人から出たものか、それとも会社が先に勧奨したものかを事実に沿って明確にすべきであるとの指摘がされました。これは、本件で退職勧奨があったかどうかという論点を明らかにするためのものです。

また、私は出勤停止の懲戒処分を受けていますが、「一つの事案で2度の懲戒はできないから、2度目の配転の提案は懲戒ではなく、配転で賃金が下がることに非行はない」というような意見を述べてくれ、労働者の非行ではなく、給与が85パーセント以下に低下するという場合に該当するということになります。

原処分の取り消し

参与の意見を踏まえて、宇治ハローワークが再調査を行い、11月15日「退職勧奨はなかったが、85%以上の賃金低下について労働者の非行はない」旨の判断が改めてしめされ、宇治ハローワーク所長が原決定を翻し、離職理由を「事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職」に変更しました。

大へんな一年でしたが、前向きに資格試験に挑戦しながら就職活動を並行して行いました。支えて戴いた方にはお礼申し上げます。

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