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NHK報道:大阪市オンデマンドバス事業における待遇差別是正の闘い 裁判へ

NHKニュースで報道

2026年3月25日、オンデマンド・バス労働者の差別待遇裁判についてNHKで報道されました。主な内容は以下のとおりです。

大阪メトロのオンデマンドバス運転手ら19人が、不当な待遇格差を理由に賃金差額など約1800万円の支払いを求める訴えを大阪地裁に起こす方針を固めました 。

原告らは2024年以降、「正社員で業績連動賞与あり」との説明を受けて入社しましたが、実際には「一級特別正社員」という区分に置かれ、賞与は固定額、年末年始手当も支給されないなどの格差に直面しました 。今回の提訴では、同じ業務に就く「定年後再雇用の社員」には業績連動賞与や手当、ベースアップがある一方、現役社員である自分たちがそれらを下回るのは不当であると主張しています

原告側は、前職を辞めてまで転職した経緯から「魅力的な求人に見せかけただまし討ちだ」と訴えています 。これに対し会社側は、再雇用社員は異動の可能性があるため待遇差には合理性があると反論しています 。

NHKホームページは、こちら。

大阪市のオンデマンドバス事業の背景

大阪市は、人口減少や高齢化に伴う地域交通の変化に対応するためとして、AIを活用した新たな移動手段である「AIオンデマンド交通」の社会実験を開始しました 。2024年(令和6年)4月1日から北区、福島区、生野区、平野区で運行が始まり、大阪メトログループがその運営を受託しています 。さらに、2025年(令和7年)10月28日からは都島区や中央区を含む計12区でも新たに社会実験が展開されてきました 。3月26日からは、大阪市全域に拡大されます。

この事業の担い手として、大阪メトロは「正社員」の募集を行いました 。多くの運転手が、安定した正社員待遇を得られると信じて応募し、採用されました 。二種免許保持者は即座に、未保持者も研修を経て免許を取得した上で業務に従事し始めました 。

「正社員採用」という名の欺瞞と実態

関西の私鉄系バス会社で23年以上勤務していたベテラン運転手のAさんは、2024年2月に面接を受けました 。面接では「大阪メトロの正社員募集」であることや、「賞与は業績で決まる」旨の説明を受けています 。Aさんはこれを信頼し、長年勤めた会社を2024年3月末で退職、同年4月1日から勤務を開始しました 。

しかし、就労後に判明したのは驚くべき実態でした。Aさんたちは大阪メトロの就業規則の適用を受けつつも、別途「オンデマンドバス運転関係就業規則」という規則が適用される「一級特別正社員」という、従来の正社員とは区別されたカテゴリーに置かれていたのです 。

具体的には、以下のような不合理な格差が存在していました。

  • 基本給の相違: 同じ大阪メトロ所属で同じバス運転業務を行っていても、従来の正社員とは基本給が異なります 。
  • 賞与の固定化: 「業績連動」と説明されていた賞与は、実際には業績に関わらず夏冬各30万円の固定支給でした 。
  • 諸手当の欠落: 年末年始手当が支給されず、一度支給された手当が「誤支給」として翌月差し引かれるといった事態も発生しました 。

本件の最大の争点は、同じ「正社員」という括りの中で、特定の職務に従事する者だけに別の就業規則を適用し、労働条件に差をつけることの是非です 。

法律上の解釈と課題

現行法(パートタイム・有期雇用労働法など)では、非正規雇用(有期、パート、派遣)であることを理由とした不合理な待遇差は禁じられています 。しかし、「正社員同士」の格差については、直ちに違法とする明文規定が乏しいのが現状です 。 とはいえ、以下の観点から法的な問題が指摘されます。

  • 同一価値労働同一賃金の原則: 職務内容や責任の重さが同じであれば、同じ賃金を支払うべきという原則です。同じバス運転業務でありながら、適用される規則が違うというだけで格差を容認できるかは大きな疑問が残ります 。
  • 信義則上の問題: 面接時に「従来の正社員と同じ待遇」を想起させる説明を行い、労働者に前職を辞めさせてまで採用した経緯がある場合、実態の異なる条件を押し付けることは説明義務違反や信義則違反に問われる可能性があります 。

労働組合による闘いと訴訟への決意

当初、Aさんたちはユニオンショップ制により既存の労働組合に加入していましたが、その組合は格差是正に消極的でした 。納得できないAさんたちは「なかまユニオン」に加入し、団体交渉を開始しました 。 会社側は「就業規則が分かれている」「オンデマンドバスの業績に応じている」という形式的な説明に終始し、合理的な回答は得られませんでした 。

現在、Aさんを含む19名の組合員は、裁判を通じてこの不合理な格差を明らかにすべく、訴訟の準備を進めています 。


事例に関連した法的アドバイス

もし、あなたが同様の「求人票や面接時の説明と、実際の処遇が異なる」という状況に直面した場合、以下の対応を検討してください。

  1. 証拠の確保:

採用時の求人票、面接時のメモ、労働条件通知書、就業規則の写し、給与明細などを全て保管してください。特に面接時の「業績連動賞与」といった口頭の説明は、後の争点で重要になります。

  1. 不利益変更の確認:

「一級特別正社員」のような新たな区分が、合理的理由なく既存の労働条件より著しく低い場合、就業規則の不利益変更(労働契約法10条)の法理に照らして争える可能性があります。

  1. 同一労働同一賃金の主張:

正社員間であっても、業務の内容、責任の程度、配置の変更範囲が同じであれば、賃金格差に「合理的理由」が求められます。会社側にその合理的な説明を求めることが第一歩です。

  1. 専門機関への相談:

本事例のように、個人での解決が難しい場合は、労働組合(ユニオン)への加入や、労働問題に強い弁護士への相談が不可欠です。

今回の訴訟は、日本の労働現場で曖昧にされてきた「正社員間の格差」に一石を投じる重要な闘いといえます 。

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