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就業規則の不利益変更:労組の力で阻止

 勤務時間や休日、賃金など重要な労働条件を職場で統一的に定めたものが就業規則ですが、この就業規則を変更することによって、休日や賃金などの労働条件が一挙に改悪される場合があります。就業規則の変更については、労働者の過半数代表の意見を聞くことが条件付けられています。しかし、同意を得ることまで必要とされていないので、労働者の過半数代表が「反対」の意見書を会社に提出したとしても、労働条件の不利益変更は阻止できない-そう考えがちですが、そうでしょうか?

 少数でも労働組合の組合員がいれば、就業規則の不利益変更は阻止できます。

 なかまユニオンで、たった一人の組合員が、就業規則の不利益変更を阻止した具体例を報告します。

(写真と本文は関係ありません。)

 エックス薬局(仮称)は、薬剤師を1000名近く抱え、全国で薬局数百店舗を展開する薬局チェーンの大手企業です。

 3月に突然、就業規則の年間休日に関する改定案が提案されました。年間休日は、これまで、①日曜日②土曜日③12月31日から1月3日、④国民の祝日に関する法律に定める休日と定められていました。それを④を「その他会社の定める日」に変更するというのです。その理由としては、ゴールデンウイークの10連休中にも店舗を開ける社会的使命があり、「国民の祝日」にも店舗を開ける必要があるからという説明でした。休日出勤すれば良いではないかと思いますが、そうすると「人件費がかさむので、休日出勤ではなく、出勤日にしたい」だから、就業規則を改訂したいということです。

 しかし、この改訂には重大な問題点がありました。それは、年間休日の日数が、旧就業規則では祝日法にのっとって自動的に決まるのに対して、「会社の定める日」にしてしまうと、そのタガが外れて、休日日数を減らすことが可能になるという事です。これは、就業規則による労働条件の不利益変更です。

 これをなんとか阻止したい、そう思って、労働組合から団体交渉を申し入れました。組合員はたった一人ですが、会社はこれを無視する事ができません。その根拠は、労働契約法にあります。

 労働契約法は、第9条で、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定めています。ただし、第10条で、例外として、就業規則変更の内容や変更の必要性などの変更に係る事情が、合理的ならば可能だとしています。その事情の中に、「労働組合等との交渉の状況」という言葉が明記されているのです。つまり、労働組合があれば、労働組合との交渉抜きに就業規則の不利益変更はできないのです。

 エックス社の団体交渉で、その点を強く主張した結果、就業規則の改訂案は、「④その他会社が指定する休日、ただし、国民の祝日に関する法律に定める休日日数を下回らないものとする」と変更されました。たった一人ですが労働組合の力で、1000人の労働者の労働条件を守ったのです。労働者の労働条件を守るのは、労働組合です。

★参考★

労働契約法

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

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