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派遣先との直接雇用を認定!大阪高裁

11.4大阪高裁判決傍聴記

入廷行進

11月4日、東リ偽装請負事件の控訴審判決の言い渡しがあった。大阪高裁の裁判だが、判決の言い渡しは地裁の大法廷で行われた。清水響裁判長は、入廷するなり、「今から判決を言い渡しますが、途中で声を発したりしないように。傍聴者が聞き取れなくなったりするといけないので」旨注意を述べた。

不当判決かと身構えたが、裁判長は言い渡した。「主文1,原判決を取り消す。2,…労働契約上の地位にあることを確認する。3,…この判決は、第3項及び第4項に限り仮に執行することができる。」裁判長が告げた。これは、一審神戸地裁判決を取り消す、逆転完全勝利判決だ。裁判長の注意を守って法廷の静寂は守られたが、誰もが判決に感動したはずだ。

 判決において、偽装請負(違法派遣)状態で働かされていた派遣労働者5名(L.I.A労働組合)が、派遣先東リ株式会社と直接の雇用関係があると認定されたのだ。違法派遣を許さず、労働者を使用して利益を上げている企業が雇用の責任を負うべきであるという「直接雇用の原則」が貫徹された画期的な判決だ。

リーマンショック後の大量の派遣切りとその後の幾多の裁判を受けて、派遣労働者保護のために改正された労働者派遣法40条の6「直接雇用申し込みみなし」制度を適用された日本で最初の勝利判決となる。法律が改正されたものの、その後労働行政が大きく後退し、かつては「偽装請負」と認定されたいたような事案を労働局が偽装請負であると認定しなくなり、これまでこの「直接雇用申し込みみなし」制度は力を発揮することができなかった。

東リの工場の偽装請負状態でも、兵庫労働局は、「偽装請負状態はなかった」と判断し、一審の神戸地裁も「偽装請負とは言えない」と原告敗訴の判決を言い渡した。今回の控訴審判決は、工場の労働実態を詳細に検討して「偽装請負であった」と正しく認定したのである。多くの違法派遣状態で働かされている全国の労働者に大きな希望を与える判決だと考える。

東リは、ただちに5人を直接雇用し職場に戻すべきだ。LIA労組を支援する会、なかまユニオンは、職場復帰を実現するまで今後も共にたたかう。

以下、弁護団の声明である。

大阪高等裁判所判決を受けての弁護団声明

東リ偽装請負事件(大阪高等裁判所令和2年(ネ)第973号)

1 事案の概要

東リ株式会社(以下「東リ」)は、その伊丹工場(兵庫県伊丹市)において、主力製品である巾木(床と壁の繋ぎ目に使用される建材)を製造する巾木工程と、接着剤を製造する化成品工程で、1990年代後半頃から原告ら労働者を偽装請負で就労させてきた。2015年夏に原告ら労働者は労働組合を結成し、2017年3月、組合員のうち執行部を中心に一部有志(原告ら)が先行して労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「派遣法」)第40条の6(直接雇用の申込みみなし規定)に基づく承諾通知を東リに送付し、同社に対して直接雇用に関する団体交渉を申し入れた。折しもその2017年3月、東リは、当時同社に原告ら労働者を供給していた偽装請負会社に見切りをつけ新しく用意した派遣会社(株式会社シグマテック。以下「新派遣会社」)に原告ら労働者の雇用を引き継がせる手続き中であった。この移籍の過程で、新派遣会社が組合員だけを採用拒否するという事件が起きた。3月下旬、新派遣会社から各労働者に最終的な採用通知が送られる直前に、東リへ承諾通知を送った組合の中心メンバー5名を残して、16名いた組合員のうち11名が一斉に脱退した。そして、もともとの非組合員及び組合脱退者は全員が新派遣会社から採用通知を受ける一方、組合に残った5名は全員が不採用通知を受けた。かくして、偽装請負という不正義を糺すため行動をした原告ら5名は、その故をもって2017年3月末に東リ伊丹工場から放逐されたのである。

2 神戸地方裁判所(裁判官泉薫・横田昌紀・今城智徳)の不当判決

原告らは、2017年11月21日、東リに対し派遣法第40条の6に基づく地位確認等を請求する訴訟を神戸地方裁判所(以下「神戸地裁」)に提起した。しかし神戸地裁第6民事部(裁判官泉薫・横田昌紀・今城智徳)は、2020年3月13日、原告らの就労実態は偽装請負ではなかったなどとして請求棄却の不当判決を言い渡した。原告ら労働者が就労していた巾木工程及び化成品工程は、東リ伊丹工場の有機的一体な一部として組み込まれ、東リが、組織的に、原告ら労働者を他工程(東リ従業員ないし派遣労働者で構成する工程)の労働者と同様に指揮命令していたことを示す数々の証拠(書面やメール等)が存在するのに、裁判官らは、それらを無視し、またそれら証拠の作成者であって東リの原告ら労働者に対する指揮命令における要の役割を果たしていた東リ従業員の尋問すらもせず、証拠が示すものと反対の事実を認定するという、あってはならない違法を冒したのである。

記者会見

3 大阪高等裁判所(裁判官清水響・川畑正文・佐々木愛彦)の判決

しかし大阪高等裁判所第2民事部(裁判官清水響・川畑正文・佐々木愛彦)が本日言い渡した判決(以下「本判決」)は、東リが伊丹工場で原告ら労働者を偽造請負で就労させてきたと正しく認定し、さらに東リが派遣法等の規定(規制)の適用を免れる目的で偽装請負をおこなってきたこと等を認め、神戸地裁判決を取り消し、派遣法第40条の6を適用して、原告らが東リの労働者であることを認めて2017年4月以降の賃金を支払うよう東リに命じた。本判決は、① 偽装請負該当性の判断にあたっては、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に沿って判断し、東リが、日常的かつ継続的に、伊丹工場の他工程と同様に指示や労働時間の管理等をする偽装請負をおこなっていたと認定した。② また、派遣先に派遣法等の規定(規制)の適用を免れる目的があったか否かの判断にあたっては、「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有する者は、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認する」という基準を示し、主観的要件(派遣先の「派遣法等の規定~を免れる目的」)は客観的事情から認定されることを示した。③ さらに派遣法によりみなされた直接雇用の申込みに対する承諾によって成立する契約内容、契約期間については、形式的に交付されていた有期労働契約書によらず就労の実態に即して派遣先(東リ)との契約内容を認定した。以上の認定は、違法派遣、とりわけ労働者派遣の実態があるにも拘らず請負その他労働者派遣以外の名目で就労をさせて雇用責任を潜脱する事業者の責任を見逃さず、派遣法第40条の6(直接雇用の申込みみなし規定)の趣旨である労働者の雇用の安定を正しく保障する、裁判所の積極的な姿勢を示す先駆的な判断であると高く評価する。

4 結語

東リ及び新派遣会社により職場から放逐された原告らは、誇りにしていた仕事を奪われたこの4年7か月もの間、アルバイト等で生活を支えながら、労働委員会及び裁判所での闘争を余儀なくされてきた。長い者で19年、短い者でも4年以上、東リに直接雇用された労働者と変わりなく伊丹工場で懸命に働いて、東リが得てきた利益を生み出してきた労働者達である。本件の争点である派遣法第40条の6(直接雇用の申込みみなし規定)が創設されたのは、リーマンショックにより起きた2008年の大量の派遣切りがきっかけであった。この規定は、偽装請負で搾取される労働者の保護を強め、それにより利益を得ている就労先に雇用責任を認めさせよ!、という労働者の悲願が結集して生まれた規定である。この規定が、本判決により創設以降初めて適用が認められ、ようやく労働者の保護が図られた。我々は、本判決を歓迎し、本判決が、偽装請負・違法派遣の認定・指導に極めて消極的な立場をとっている行政(労働局等)への警鐘となることを期待する。今日では、偽装請負等の非正規労働だけでなく「雇用によらない」働かせ方も拡がり、雇用責任を潜脱しがなら利潤をかすめ取る手法がますます拡大している。我々は、今後も、働く者の権利を守り強めるために取り組んでいく所存である。以上2021年11月4日東リ偽装請負事件原告ら弁護団(弁護士村田浩治・大西克彦・安原邦博)

報告集会

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