不当解雇は許さない

なか卯、解雇に遺憾表明し解決金

 2021年11月26日、1年契約の更新を繰り返し5年にわたってなか卯梅田東店で働いていたアルバイト社員Aさんを、契約期間途中の2020年10月30日に株式会社なか卯が解雇した事件で、画期的な勝利和解が大阪地裁で成立しました。この和解の中で、(株)なか卯は「遺憾の意」を表明し、解雇を会社都合退職とし、解決金を支払うことを約束しました。

 11月26日11時30分の裁判に引き続いて行われた和解の場には、Aさんの求めに応じて、2020年にAさんに解雇を言い渡した管理職も同席しました。和解についてはNHKも報道しました。

 非正規労働者が、理不尽な解雇に声を上げて勝ち取った大きな勝利です。

NHKの報道より

画期的な和解内容

和解条項は、以下のようなものです。

和解条項

1 原告と被告(なか卯)は、原告と被告(なか卯)との間の雇用契約が令和2年(2020年)10月30日付けで被告(なか卯)の都合により終了したことを相互に確認する。

2 被告(なか卯)は原告に対し、本件に関して遺憾の意を述べる。

3 被告(なか卯)は、原告に対し、本件解決金として〇円の支払義務があることを認める。

4 被告(なか卯)は、原告に対し、前項の金員を令和3年(2021年)12月15日限り、原告指定のロ座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は被告(なか卯)の負担とする。

5 原告、被告(なか卯)及び利害関係人(なかまユニオン)は、第3項の和解金額について正当な理由なく、第三者に開示しない。

6 原告は、本件訴訟に係るその余の請求を放棄する。

7 原告、被告(なか卯)及び利害関係人(なかまユニオン)は、原告と被告(なか卯)、被告(なか卯)と利害関係人(なかまユニオン)との間には、この和解条項に定めるもののほか、他に何らの債権債務がないことを相互に確認する。

8 訴訟費用は各自の負担とする。

これまでの経過

声を上げたら理不尽な解雇

解雇の原因をさかのぼると、2020年9月22日の深夜帯勤務終了後に、「引継・要望」として残した職場改善を求めるメモ書きにあったのではないかとAさんは考えています。

そのメモ書きの内容は、「昼・夕帯から夜・深夜帯への引継の完成度が非常に良くないこと」「引継後の従業員に要求するなら、引継前の準備を充実してほしいこと」「上記の事があるのに深夜帯従業員が悪い様に感じさせられて不満に思ったこと」をメモ書きにまとめて引継として伝えました。

これが、責任者や上司(社員)の逆鱗に触れてしまったようでした。

このことによって、1度面談をしたことのある上司から再面談と言われましたが、Aさんはこの方を信用できなかったので躊躇したら、シフトゼロにされてしまいました。(9月23日の事)

 そこでAさんは、会社の従業員相談窓口を利用して別の上司(初対面)の方と面談をすることになりました。希望を抱いて面談に臨みました。しかし、別の上司は、「お前(アンタ)が悪い」の1点張りで、「アンタ、立場わかってるか?」等言われました。

そして、Aさんが一方的に悪いという「指導書」にサインしろと迫られました。1度は拒否しましたが、このままでは勤務できないと思い、謝罪し、サインすることを申しでました。しかし、その上司は、「反省していない」と言い、つっぱねられました。

 その後、退職勧告から自主退職強要の数日後、10月30日に即日解雇されてしまいました。解雇理由は、「職場の秩序を乱しまた風紀を乱す行為に該当したため」というものでした。

なか卯は、解雇を通告すると同時に『解雇に関する合意書』への押印を求めたり、解雇後も制服の返還を求めると同時に退職届の提出を求めるなどしていました。

「解雇」と言いながら、「同意退職」に持ち込もうとしていたと言えます。

また、解雇後も1カ月近く解雇理由証明書を発行せず、社会保険や離職票も手続も2カ月以上放置していました。

ユニオンで団体交渉へ

ユニオンで申し入れを行ったところ、なか卯はやっと社会保険や離職票の手続を行ってきました。解雇理由を明らかにすることを求め職場復帰を求めましたが、会社は、これに応じようとしませんでした。

裁判へ

Aさんは、なか卯の従業員としての地位確認を求めて、大阪地裁に提訴しました。代理人は、中井雅人弁護士(暁法律事務所)。

なか卯は「従業員に不安を与え、職場の秩序を乱した」こと等を解雇理由とし、Aさんがやむにやまれない思いで掲示した労働環境の改善要求について、これを陰口、不満としかとらえず、「個人的な恨みを晴らすという意図に基づく掲示に業務上の根拠は全くなかった」と断言しました。

流れを変えた傍聴と街宣

裁判所は、コロナや弁護士が東京からやってくること等を理由として、裁判当初からWEB裁判を主張しましたが、原告側としては、「裁判公開の原則」を主張して法廷で弁論を開くことを主張し、結果4回の裁判をすべて法廷で開催しました。毎回多数の傍聴者が廊下まであふれました。

また、10月1日第3回の裁判後、初めての街頭宣伝行動に取り組みました。原告のAさんが5年間働いてきた梅田東店前の交差点を中心に四方に分かれて、『なか卯は不当解雇を撤回せよ!』と書いたのぼり旗を立て、ビラを配布しながら、マイク宣伝をしました。ちょうどお昼時で人通りが多く、若い人もビラを受け取っていました。原告のAさんは、店舗を見通せる場所で自らのぼり旗を持って立ちました。

昨年9月にシフト外しにあってから、約1年ぶりに訪れた梅田東店でした。「思ったより多くの人がビラを受け取ってくれて良かった」と手応えを感じたそうだ。終了後は「店で働いていた時には、まさか自分が店の前で宣伝行動することになるとは思っていなかった」と感想を述べました。

その1週間後に、会社から和解の提案がありました。

和解後

マスコミも報道

提訴については、NHKや新聞各紙が報道し、和解についてもNHKが次のように報道し、注目を集めました。

エラー - NHK

「「遺憾の意」を示すなどとする和解案を提案したため、男性は受け入れ、26日、和解が成立したということです。

男性の代理人の中井雅人 弁護士は「男性の主張を認めたことに等しい勝訴に近い内容で、非正規労働者に勇気を与える和解だと思います」と話していました。

原告の男性は「いい形で終われてほっとしています。正当な理由なく、好き嫌いで解雇するのは、おかしいと思います。今後は問題が起きたら真摯(しんし)に対応してほしい」と話していました。」

NHK報道より

声を上げよう

 悪い労働条件や理不尽な扱いを受けても、非常に不安定な雇用関係で働いている非正規労働者が声を上げるのは大変難しいですが、知恵を集め、力を集めれば、大資本の勝手にさせない、一矢報いることができることを今回の勝利は示していると思います。

 我慢を強いられている労働者のみなさん、特に飲食チェーンで働いているみなさん、ぜひ、情報をお寄せください。負けずに対抗していきましょう。

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