11月27日、労災申請を嫌悪した会社に解雇された事件の勝利解決を祝う「おめでとうの会」がPLP会館で盛大に行われました。
労災を嫌って解雇
20代のエムさん(仮称)は、2019年6月に通信機器販売ワイ会社(仮称)に営業職の正社員として採用されました。7月末の会社の業績発表会の席上、突然同僚の社員に肩から上腕部を両手で強打され打撲傷を負いました。痛みがやまないエムさんは医者を受診するとともに、治療費などは労災保険に申請してもらうように会社に求めました。当然協力してくれると思っていましたが、会社はこれを拒否し、なんと「3カ月の試用期間満了をもって本採用しない」と、解雇を通告してきました。
「試用期間解雇」も正当な理由が必要
「試用期間」なら簡単に解雇できると誤解している経営者がいますが、すでに採用段階で正社員としての契約が成立しているので、解雇するには「合理的な理由」と「社会的相当性」が必要です。エムさんは大阪の労働組合なかまユニオンに加入し、解雇撤回の団体交渉を申入れ、その場で解雇の理由の説明を求めました。ワイ社は、「労災申請しようとしたから」とは口が裂けても言えず、「口のきき方が悪い」など、事実無根の理由にならない理由を並べたてました。団体交渉での問いかけに窮した会社は、第2回目の団体交渉の途中で一方的に打ち切りを宣言してしまいました。
会社が裁判を起こす
紛争の長期化を避けたかったのか、団交打ち切りの後は、ワイ会社が原告となって、エムさんを被告として「従業員としての地位不存在の確認」を求める裁判(労働審判)を起こしてきました。労働審判は、基本的に3回の審判で決着をつけるという制度ですから、十分な事実審理はできません。被告にされてしまったエムさんは、やむなく「従業員としての地位の確認」を求める裁判を原告という立場で大阪地方裁判所に起こしました。
団体交渉の再開求める
なかまユニオンは、労働組合として、あくまで団体交渉の場での解決のため団体交渉の再開を求めて、大阪府労働委員会に救済を申し立てました。団体交渉に応じなさいということと、2度と同じような行為を繰り返しませんという誓約文をHPに掲載しなさいという命令を、労働委員会がワイ社に命じるように求めました。
労働組合だからできること
裁判や労働委員会だけでなく、労働組合の「団体行動権」をフルに活用しました。団体行動権は憲法や労働組合法で保障されています。ワイ社の門前でのアピール行動や万代スーパー前でのアピール行動、ワイ社周辺の住居へのポスティング、京橋駅でのアピール行動、また、命令が出た後は、ユーザーへの協力要請行動など、9回取り組みました。これらの行動が解決への力になったことは明らかです。
労働委員会が命令交付
大阪府労働委員会は、2022年1月7日、ワイ社に対して①団体交渉に応じること②誓約文を手交することという命令を交付しました。
大阪府が入札参加停止
大阪府と労働組合の確認で、大阪府労働委員会から命令を交付された企業は、大阪府の発注する事業の入札から排除するというルールがあります。命令を受けたワイ社にも1カ月の入札参加停止の措置が取られました。
裁判所で和解
大阪地方裁判所での事実審理は証人調べまで行われ、原告のエムさんが堂々と証言したのに対して、ワイ社側証人はしどろもどろの証言に終始し、その後の裁判所での和解で画期的勝利和解が成立しました。
巨大ケーキでお祝い
会場には、なかまユニオン自慢の豪華な食事と、お祝いの巨大ケーキも用意されており、弁護士の波多野進弁護士をはじめ参加者からエムさんに祝福の言葉がかけられました。
エムさんの闘いを支えてきたなかまユニオン京都支部は、寸劇と歌の出し物を用意して、これまでの苦労を笑いを通して表現した。
最後に、エムさんの「社前行動は気力が要りました。さまざまな行動に、一緒に参加してくれたみなさんには感謝しかありません。会社は、行動参加者をビデオに撮っていましたが、社内にも階段を写すフリをして社員を撮るカメラもある異常な状況でした。最後までやり切れて、本当によかったです。私の闘いは終わりましたが、これからは若者が働きやすい職場にしていくために、がんばっていきたいです」という決意表明のあいさつで会を終えました。
若者が人らしく働ける社会をめざして、なかまユニオンはさらに闘いを進めていきます。
職場の問題解決は、なかまユニオン06-6242-8130に相談を。