教職員の闘い

コロナ在宅勤務不払い裁判で勝利判決!

「校長が本件承認研修を承認しなかったのは国賠法違反」の判決

5月17日、判決言い渡しの法廷にはテレビカメラが入りました。

最初に撮影があり、2分間、じっとしているのがとても長く感じられました。

裁判長の判決についてのことばが「げ」で始まると「原告の請求を棄却する」という敗訴判決、それ以外なら勝訴と聞いていたので、初めのことばに注目していました。

しかし、裁判長は、主文ではなく、理由の説明から始めました。

その内容は以下のようなものでした。

争点1「原告の給与及び勤勉手当の請求の可否について」。

「校長が原告の承認研修申請を承認したとは認められないから、3月19日から3月31日の公休日を除く8日間を勤務として認めることはできない」が、「3月24日までの3日間については、校長は自宅での承認研修として扱うつもりで対応していたために原告は出勤しなかったのであり、原告が出勤して勤務しなかった原因は被告にあるから危険負担の法理により3日分の給与44262円を支払うき」。

次に、争点2「校長が本件承認研修を承認しなかったことは、国賠法1条1項違反かについて」。

「『自宅での承認研修は認められないことになっている』という市教委の見解は、当時の新型コロナ感染状況などの社会情勢等考慮すべき事項を考慮せずに従来の見解を形式的に適用せよというもの。校長が、社会情勢等考慮すべき事項を考慮せずに専らその見解に依拠して自らの判断を変え、自宅での承認研修を承認しなかったことは、職務上の義務違反であり、裁量権の逸脱・濫用として、国賠法1条一項違反と言える。」「損害の慰謝料は、原告の経済的不利益を考慮して5万円が相当」。

争点3「本件出勤命令は違法なパワーハラスメント又は安全配慮義務違反として国賠法1条1項上違反かについて」。

「経過を見ればパワーハラスメントに当たるということはできず、安全配慮義務にも違反するとは言えない」。

まとめると、以下のような結果でした。

未払い給与、未払い賞与の請求は認めず、初めの3日間分だけ、危険負担の法理によって救済(44262円)

校長が本件承認研修を承認しなかったことは、国賠法1条1項違反(慰謝料50000円)

出勤命令はパワーハラスメント又は安全配慮義務違反ではない。

もともとこの問題は、私がなかまユニオンのCEART要請団の一員としてスイス・ジュネーブに行き、帰国した2020年3月17日に新型コロナ政府専門家会議が厚労省に欧州からの帰国者には2週間の自宅等での待機と公共交通機関不使用を要請していたことに始まります。翌18日にはそれが政府方針となる中で、私は出勤しない方がいいと思うが、その場合の勤怠の扱いはどうなるのかと相談したことに対して、大阪市教委が、どうにもできないから、後は校長権限の範囲で考えてもらうしかないと答えたことが最も問題でした。実は、在宅勤務の扱いにすることもできたし、職務専念義務免除にして、発熱がなくても特別にPCR検査を受けさせることもできたのです。初めての判断であっても、大阪市新型コロナウイルス対策本部長・松井一郎市長が判断すればできたわけです。大阪市がそれをしなかったために、苦肉の策で始めていた「自宅での承認研修」の形をとった自宅勤務に対して、市教委が横やりを入れて、出勤を命じてきたために問題が明らかになったという経過でした。

自宅での研修を認めるかどうか、出勤を命じるかどうかは校長権限であるため、校長の行為を問う裁判になりましたが、大阪市・大阪市教委の認識と判断をこそ問いたいという思いで始めた裁判でした。そういう意味では、大阪市・大阪市教委の認識・判断を正面から判断しない判決に不満は残りますが、私が出勤しなかった行為の正当性が認められたこと、10年前の市民の理解を唯一の理由とした「自宅での承認研修は原則認めない」とした市教委内部の申し合わせを振りかざして出勤を強制した市教委の行為が当時の新型コロナ感染症拡大の情勢からして不適切であったと断罪された者であることから勝利判決と評価できると思います。

この事例にみられるような対応をしていた大阪市は、新型コロナウイルス感染症関連死亡率が全国一高い状況があります。間違った対応の事例が明らかになったわけですから、これまでの新型コロナ感染症対策がどうだったか全面的な見直しを行うべきです。

判決は多くのテレビ・新聞等で報じられました。

今後、横山新市長に対して、「大阪市は控訴するな!」「コロナ対策の全面的見直しを行え」と要求していきたいと思います。また、この判決で「とにかく(何も考えずに)市教委の指示に従う」という校長の行動は「職務上の義務違反」とされたわけですから、維新支配の中で広がっている「身を守るためにとにかく上の指示に従う」という風潮を見直す契機になってほしいと願っています。

みなさんの応援によって、勝利判決を勝ち等ことができました。ありがとうございました。

教職員なかまユニオン組合員 コロナ在宅勤務不払い裁判原告 松田幹雄

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