社会を変える福祉・医療

集団感染防止を:大阪府交渉

9月4日、新型コロナ感染症対策の抜本的な強化を大阪府に対して求める要請行動が取り組まれました。この行動は、Zenko(平和と民主主義をめざす全国交歓会)、山川会など、市民団体共同の行動として取り組まれたものです。大阪府庁の6階の会議室で、大阪府側の職員6名が対応して、事前に申し出た要請書に回答する形で1時間の交渉が取り組まれました。 

  要請内容としては、PCR検査センターの設置やPCR検査の委託契約を交わす医療機関を増やすなどして検査の体制を強化すること、院内感染や施設内感染を防ぐために介護・保育・教育・医療分野で働く人たちが必要な時にすぐにPCR検査を受けられる制度を作る事などです。 

 大阪府の資料を見ても感染者は、マスコミで宣伝されるような夜の街とか飲食店での接触による感染者ではなく、医療機関や障害者高齢者施設で感染者が多発しているということがわかります。院内感染や集団感染をどう防ぐかが、緊急の課題になっています。なかまユニオンの組合の中にも介護施設や病院で働く組合員が数十名います。私たちにとっても差し迫る重大な課題といえます。 

 交渉には、大阪府側は、大阪府保健医療企画課、感染症対策課、保健医療企画グループ等の職員が対応しました。大阪府の回答としては、院内感染・集団感染対策として保健所が各施設に対して7月8月に研修会をした、院内感染やクラスターが発生している施設病院には現地調査をし、感染対策に成功している施設の経験を共有し対策を教えている、と言うものでした。 

 参加者からは、感染リスクを減らすためアルバイトやパート職員を減らして、少数の職員で施設を運営し職員は限界まで働き疲弊しているという実態の訴えがありました。抜本対策として、東京千代田区のように、区内の高齢者施設の職員全員を3ヶ月に1回定期的にPCR検査するような、社会的検査が必要ではないか、そういう意見も出されました。 

 しかし、大阪府としては、現在は公費で検査を受けられる対象者は、濃厚接触者と言うだけではなく、例えば感染者が出た建物の違うフロアの職員に対しても検査をするとか、特定の地域を検査をするとか、医者が判断すれば可能となっており、リスクの高いところは優先的検査を受けられると言うものでした。これでは、クラスター対策の後追い対策の延長でしかありません。集団感染を予防的に防ぐ対策とは全くなっていません。 

 交渉では病床数も問題となりました。仮に感染したとして重症病床や軽症者病床も決定的に不足しています。重症病床を188床確保したと大阪府は宣伝していますが、実際の運用数は127床に過ぎません。8月30日現在で61人が利用し、重症病床の5割近くが既に使用されています。軽症者病床は、大阪府の試算では1400床必要になるそうですが、8月30日現在の実際の運用数は877床に過ぎません。確保された病床と実際の運用数がかけ離れてしまっているのは、病床を確保しても医者やナースが不足していて運用できないからです。つまり、人件費が不足しています。 

 より根本的には、大阪府は病院の一般病棟含めて全体病床数を制限・削減する方針を堅持しており、コロナの病床を増やせば一般病床がますます足りなくなるという構造になっています。カジノや大型大阪万博と言う大規模開発には財政を支出するけれども、市民の生活や健康に直結する予算はどんどん削減する維新の政策は、変わっていません。この地域医療構想を撤回させる必要があります。なかまユニオンとも引き続き大阪府や各地の自治体への要請行動に参加をし、院内感染、集団感染をなんとしても防ぎ労働者の安全と利用者の安全を守るためにいっそう奮闘していきたいと思います。 

【参考資料】

大阪府知事                        2020年8月19日
大阪府健康医療部長
                  憲法いかそう茨木市民の会
                  平和と民主主義をともにつくる会・大阪
                  寝屋川 平和と市民自治の会
                  平和と民主主義をめざす全国交歓会
                  連絡先:茨木市駅前2-1-27
                   
               【請願趣旨】 
 新型コロナウィルス感染が再び急速に拡がっています。大阪府内でも毎日、陽性確定者が200人前後であり、かつ検査数が増えても陽性率が10%を超えており、検査実施数が全く不足で感染の広がりに追いついていません。茨木市をはじめ各地の保健所では再び相談件数が急増し、コロナ対応を含め市民の求めに十分な対応ができません。


 吉村知事は7月1日に、「府内の9保健所と大阪市に4カ所のPCR検査センターを作る。7月中に10カ所程度の検査センターを作る。」「1日3500件の検査能力を目指す」と記者会見で表明しましたが、PCR検査数は未だに1日あたり2000件を超える程度で増えていません。これは検査を請け負う医療機関の負担が大きいためで、医療機関任せではPCR検査は今以上に増えません。PCR検査センターの設置が進んだとの情報もありません。


政令市や幾つかの中核市はPCR検査センターを設置したり、検査数など情報開示や学校単位の検査を実施しています。府内でも市町村間で住民の権利、安心と安全に差が生じており、大阪府は底上げを図るべきです。厚生労働省は「地域の感染状況を踏まえた幅広い検査」の実施へと方針を転換しましたが、大阪府でこれを一律に実践する事が急ぎ求められます。長崎県や、大阪府内でも和泉保健所が和泉市、地元医師会などとPCR検査契約を交わしたように、自治体独自の努力が進んでおり、また可能です。


大阪府の陽性者の入院・療養施設の利用率が4割を超え、重症者病床の利用率も30%を超えました。陽性者が自宅待機中に家庭内感染が多数発生しているとの報道もあります。国は「医療現場からはベッドを確保していても、いざ受け入れとなれば多くの人が対応しなくてはならず、負担が増えているという声も出ている」と記者会見で述べました。大阪府の責任でPCR検査と安心して入院、治療できる態勢の準備が緊急に求められます。そのためには、医師、看護師、検査技師の人件費の増額が是非必要です。


 最近、保育所や学校職員の感染も増えています。これらを含め福祉・教育を支える施設や学校での感染が起きた場合、その施設を比較的長期にわたり閉鎖する事態が起きています。教育や福祉・セーフティ機能を維持し働く人の負担を軽減するために、この分野で働く人たちのPCR検査を拡充し、施設の閉鎖を回避、緩和するべきです。


 陽性者の入院・治療態勢の増強には病床数の増加が必要ですが、大阪市十三病院の事例のように、既存の病院・病床をコロナ感染対応に転用することは、他の市民の医療を犠牲にし、医療従事者の負担を大きくする物で、「医療崩壊」の危機回避にはなりません。この点で、国と大阪府が進める地域医療構想を撤回し、病床数を制限、削減する行政指導をやめ、医療費の拡大と病床数の増加に転じる政策が、緊急に求められます。
 以下、要請いたします。

【要請】
1.府内の保健所管内に1カ所以上のPCR検査センターの設置を含め、PCR検査を早急に拡大してください。
  今日までの準備進行の状況を教えてください。また、PCR検査センターの設置について、現状と課題の認識を示してください。


2.PCR検査の委託契約を交わす医療機関を増やしてください。また、その場所を公表してください。今日までの委託契約の進行状況を教えてください。


3.検査対象者を濃厚接触者などに限定せず、地域、組織の関係者を包括する検査を実施するべく、各市町村への指示と態勢整備をしてください。


4.院内感染、施設内感染を防ぐため、介護・保育・教育・医療分野で働く人たちが、必要な時にすぐにPCR検査を受けられる制度を作ってください。


5.そのために大阪府や各地域の医師会、市町村との協議を急ぎ進めるよう、各保健所を指導してください。特にPCR検査センター設置の協議が進まない保健所での問題を把握し、人員や費用の援助をしてください。大阪府がPCR検査センターの設置協力を、大阪府や各市町村の医師会に要請してください。また、長崎県が県医師会と合意したように、PCR検査の集合契約を府医師会に働きかけてください。


6.既に設置された府や中核市などのPCR検査センターでも、検査数を増やすよう指導してください。また、既設のPCR検査センターの運営について、現状と課題の認識を示してください。


7.PCR検査の拡大や陽性者の入院病床を確保するために、医療従事者への人件費を増額してください。
  大阪府は、コロナ患者用病床数が不足するかもしれない、との認識を持っていますか?ご回答願います。


8.病床数を制限、削減する地域医療構想を撤回し、病床を増やす政策に転換してください。


9.保健所の増設と、保健所職員の増員をはかってください。
                                  以上

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