福祉・医療

休憩時間に電話対応させられたら

 2023年3月16日、介護福祉つながる交流会を開催しました。今回の学習テーマは「休憩時間」です。

休憩できない職場、できる職場

 職場の休憩時間というものは、会社が労働者に「与えなければならない」ものとして、労働基準法によって義務付けられているものです。休憩中は外出も自由で、労働から完全に解放されることになっています。ところが、交流会に参加した中東さん(仮称)の職場では、休憩中に電話がかかってきても誰も出る人がいないものだから休憩中であるはずの人が仕方なく出て対応するということが、頻繁に発生していると言います。人員不足のせいで、休憩時間中に仕事が回っていないのです。

 交流会参加の佐賀さん(仮称)は、「私は休憩中に20分間の電話対応をしたら、その分の休憩時間を延長してもらうよ。」と言います。法的には、佐賀さんのやり方が正しいのです。6時間を超える労働時間なら45分間、8時間を超える労働時間なら60分間の休憩時間は、必ず与えられるはずのものだからです。

 人間の体は、労働をすれば疲れるようにできています。休憩をして体と心をリフレッシュすることは、次の労働に備えるために絶対にしなければいけないことなのです。労働者がみんな疲れ果てて離職していく人が絶えない日本の介護職場で、法律を守って休憩時間を確保することの大切さを改めて考える必要があります。

託児所の廃止

 また、後半の職場交流会では、大阪市内のある病院職場で職場託児所が4月に廃止されるという問題が報告されました。子育てをしながら働いている看護師が、職場から遠くの保育所に子どもを送り迎えしなければならなくなるのです。職場託児所は認可外保育所なので公的な補助金が少なく、病院経営が苦しくなる中で「不採算部門」とみなされてしまうことが多いのです。政府も「異次元の少子化対策」などという言葉遊びをしている暇があったら、病院の職場託児所への公的補助をまじめに考えてほしいものです。

学習資料

◆休憩時間とは

 休憩時間とは、労働時間の途中に、休息のために労働から完全に解放される時間のことです。休憩時間は自由に使える時間でなければなりません。職場から離れて外出しても良いのが休憩時間です。休憩時間には賃金が発生しないので、労働時間ときっちりと区別する必要があります。

◆法定の休憩時間

 労働基準法34条では、6時間を超える労働時間に対しては45分間以上の休憩時間を与えなければならず、8時間を超える労働時間に対しては60分間以上の休憩時間を与えなければならないことになっています。分割取得はありえますが、10分程度の細切れにすることは認められません。
 労働基準法はあくまでも最低レベルの基準を定めているだけなので、これよりも多くの休憩時間を与えることはさしつかえありません。日本看護協会のガイドラインでは、8時間を超える夜勤に対しては、連続2時間以上の休憩で仮眠を確保することが望ましいこととされています。

◆手待ち時間は休憩時間ではない

 作業と作業との合間に手待ち時間が発生する業務の場合、それは休憩時間ではなく労働時間です。「客が来ない時は休憩していていいよ」とか「次の指示が来るまでは休憩していていいよ」とか言われることがあるかもしれませんが、これは法律上は賃金が発生する労働時間です。
 万が一、休憩時間中に来客の対応とか電話応対をしなければならないことがあった場合、休憩時間を削って労働したわけで、その時間分をすみやかに追加で休憩するのが本来の姿です。

◆休憩中に緊急対応業務をしてもよい職種もある

 例外的に、休憩時間にも業務対応をすることがあり外出が規制される職種があります。警察官、消防吏員、児童自立支援施設や障害児入所施設などに勤務して児童と起居を共にする労働者です。

◆休憩時間は一斉に休憩するのが原則だが

 休憩時間は、事業所の労働者全員が一斉にとることが労働基準法で定められています。しかし、介護・医療を含むサービス業では、利用客の便宜という観点から、例外的に一斉に休憩しなくても良いことになっています。
これは常に誰かが働いている状況であり、交替で休憩に入るはずなのに区切りがつかず、休憩に入るタイミングを逃してしまいがちです。人員不足を理由に、休憩中でも働くのが当然という慣例になっている違法な事業所すらあります。日々のリフレッシュをおろそかにすることで事故も増えます。肉体疲労と精神的ストレスが蓄積し、燃え尽き症候群からの離職にもつながります。

◆休憩を取れる職場にしていくために大切なこと

① 休憩はリフレッシュして業務を継続するための義務であるという考え方をはっきりさせる。これは働きすぎで燃え尽きかけている日本の労働者みんなが立ち止まって考えるべきこと。
② 休憩室の設置など、休憩できる職場環境を整える。
③ 休憩時間には仕事をしないというルールを職場で作り、よく話し合う。
④ あたりまえに休憩しても現場が回るように人員を増やす。

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