2023年2月16日、介護福祉つながる交流会を開催しました。今回の学習テーマは「労災申請実践編」。すぐにでも役立つ労災の申請の仕方についてです。
コロナ後遺症を労災申請
1か月前、1月のつながる交流会の時に、職場でのコロナ感染の後遺症でうつ状態になってしまった中東さん(仮称)が労災になるのではないかという話が出ました。中東さんは交流会のあとにすぐに労働基準監督署に相談し、職場の総務に労災にして欲しいという話をしました。職場の担当者はいったんはやってないと断ってきたのですが、誰か上の人の判断があったのか、「労災の書類を書くよ」とすぐに連絡してきたのだそうです。
職場で発行してもらった労災の書類を主治医に見せたところ、主治医は「コロナの後遺症の労災申請は書いたことが無い」と言いながらも、きちんとその書類に記入してくれました。そして、発病の経過を中東さん自身が記入して、労働基準監督署に無事に受理されたのです。労災として認定されるかどうか結果が出るには三か月くらいかかるのだそうです。
実践的に学ぶ
つながる交流会では、その労災申請書のコピーを見ながら、労災申請のリアルな実践について学ぶことができました。
労災の範囲は広い
出張を命じられた時に、その出張の移動中に発生したケガも労災になるとか、通勤途中のケガも労災になるとか、労災の適用範囲は思ったより広いということも、重要な点です。本来は労災になるはずなのに、そのことを知らないがために損をしているケースがたくさんあるのではないかという話になりました。
腰に負荷のかかる労働者の腰痛についても、昔はなかなか労災が認められなかったが、粘り強く労災を申請して闘った人がいたおかげで労災認定基準が作られ、認定が以前よりはやりやすくなりました。先輩方が苦労して勝ち取った権利も、行使しないでおくと無かったことにされてしまいます。企業の安全配慮義務をあいまいにさせないためにも、仕事中の傷病についてはきちんと労災を申請していきたいものです。
出張中も通勤中も労災
業務中のケガは労災ですが、業務中とは企業の支配・管理下にある状態をさします。例えば、お昼休憩中に休憩室にいたところ会社で火災が発生して火傷をした場合も労災になります。しかし、お昼休憩中に自分用のカップラーメンの熱湯で火傷した場合は労災にはなりません。
外回りの仕事の場合、勤務中に職場外でケガをしても労災になります。
出張中のケガも、労災です。出張のための移動中のケガも労災です。しかし、出張中に私的な行為をしている時にしたケガは、業務の中断とみなされ労災ではありません。
通勤中のケガは、通勤災害と言って労災になります。通勤は経路と通勤時間を本人が自由に選ぶことができません。そのため、業務中に準ずるとみなされるのです。帰宅途中に居酒屋に寄り酒を飲んだあとに転んでケガをした場合は、居酒屋に入った時点で通勤は中断されて通常の外出に切り替わったとみなされ、労災にはなりません。
業務による病気も労災
業務が原因で発生する病気は労災です。仕事で化学薬品を使う場合の薬物中毒や皮膚障害、心理的負荷による適応障害やうつ病なども労災です。重いものを持ったり不自然な姿勢が続いたりなど、腰に負荷がかかる作業をする労働者の腰痛も労災として認定される場合があります。
医療・介護で働く人のコロナ感染症は労災
職場で感染症に感染した場合は労災になります。コロナの場合、職場で感染したのかどうかの感染経路の立証が難しいのですが、医療機関と介護事業所で働く労働者がコロナを発症した場合は、職場以外での感染だという明らかな根拠がない場合にはすべて職場内での感染とみなして労災扱いにすることになっています。医療・介護以外の業種でも、顧客等にコロナ患者が多発していて、その仕事をしていなかった時よりも感染のリスクが高かったといういきさつがあれば、労災になります。この場合、コロナ後遺症である精神疾患や強い倦怠感や呼吸困難も労災の対象になります。
労災の申請
労災指定医療機関で治療を受ける場合と、労災指定ではない医療機関で治療を受ける場合とでは、手続きが異なります。
労災指定医療機関の場合は、療養給付の請求書(5号様式)を会社に発行してもらい、それを医療機関に提出することになります。すると、治療費が無料になります。
労災指定ではない医療機関の場合は、費用の請求書(7号様式)を会社に発行してもらい、それを医療機関で記入してもらい労働基準監督署に提出することになります。この場合、治療費は本人がいったん全額をたてかえて、あとで労災保険から払い戻されることになります。
労災のために仕事を休業した場合は、休業補償の給付請求書(8号様式)を会社に発行してもらい、医療機関で休業が必要であったことを証明してもらうことになります。
労働基準監督署での労災の認定には数か月間がかかります。労災指定医療機関なら正式に認定がおりる前から労災扱いになり、治療費を無料にしてくれます。
会社が労災にするのをいやがる場合は、労働基準監督署に相談することになります。