福祉・医療

改めて学ぶ就業規則:介護の現場で

 1月19日になかまユニオン介護福祉支部主催のつながる交流会を開催しました。18日に神明会ラ・アケソニア分会が残業代の適切な支払いを求めて大阪地裁に提訴したことを冒頭で話題にし、提訴を報道したテレビのニュース動画を見ました(写真)。前残業や着替えの時の残業代が支払われていないことは介護現場ではよくあることですが、介護労働者自身が裁判に立ち上がったことがテレビでも大きく取り上げられて話題になったのは、すごいことだと思いました。

就業規則の改訂

そして、就業規則についての学習会を行ないました。神明会ラ・アケソニアでも就業規則の一方的な不利益変更のことが問題になっています。就業規則の改定のためには、従業員代表の意見書の提出が必要になります。この場合、従業員代表には拒否権が無いのでユニオンが異議を申し立てることになるのですが、そもそも従業員代表が選出されていない場合には就業規則の改定はできるのかという問題があります。
昨年に職場の就業規則が改定されたという参加者の中東さん(仮称)の場合、職場で従業員代表なんて選出したおぼえが無いと言っていました。おそらく、誰も知らないところで事業所上層部が勝手に誰かを従業員代表に指名していたのかもしれません。本来は、それでは従業員代表とはいえません。
就業規則は本来は職場のみんなが自由に見ることができるものだということも話題になりました。職場の就業規則がどこにあるか知らない人も多くいます。最近では、職場のパソコンや職場内ネットワークに就業規則が保存されているところもあるのですが、ファイルの場所を調べるのが一苦労だったりします。就業規則を労働者が見るのを嫌がる事業主がいますが、これは違法なことです。

コロナ後遺症でうつ病に?

 交流会の後半では、看護師である中東さんが職場でコロナに感染してしまい、その後にうつ病を発症して休職中であるという事案について話し合いました。主治医は「うつ病はコロナの後遺症かもしれない」と言っているそうです。
 この場合、うつ病での治療が労災保険の適用になるはずだという論議になりました。私病による休職の場合は健康保険から給料の6割分の傷病手当が出ますが、労災なら8割分がもらえて有利です。
 ただ、コロナ後遺症の精神障がいが労災になることを知らない人も多いので、介護福祉支部でその資料を用意して主治医や職場との話し合いに備えようということになりました。

以下、学習会の内容です。

◆就業規則とは

 使用者が定める規則で、事業所で働く全ての労働者に適用されるものです。労働条件や労働者の守るべきルールなどを定めています。就業規則の本則に併せて、賃金規程などの詳細な規定も就業規則に含むと考えられます。就業規則は、掲示、備え付け、書面交付など、労働者が見たいと思った時にいつでも自由に見ることができなくてはいけません。就業規則を隠す会社がありますが、これは違法です。
労働基準法を下回る労働条件を定めた部分は無効となります。
労働者を10人以上雇う使用者は就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければなりません。作成や改定にあたっては従業員代表の意見を提出させなくてはなりませんが、従業員代表に交渉権や拒否権はありません。
就業規則の不利益変更のためには、使用者は労働者全員といちいち不利益変更の内容を確認する労働契約を結びなおさないといけません。ただし、変更に合理的な理由があり、変更内容が「社会的に妥当な範囲内」で、変更内容が労働者全員に十分に周知され、労働組合との交渉を経た上で不利益変更が容認された場合などは、個別に全員の合意を取り付けなくても不利益変更ができるとされています。

◆労使協定とは

 労働基準法が本来は禁止していることを例外的に許可するにあたって、使用者と従業員代表とが結ぶもので、労働基準法に定めがあります。残業を許可する協定(36協定)、1年単位の変形労働時間制の協定、派遣労働者の同一労働同一賃金の派遣先均等を免れる協定などです。従業員代表に拒否権があり、従業員代表がハンコを押さなければ締結できません。

◆労働協約とは

 使用者と、2名以上の組合員がいる労働組合とが結ぶもので、労働組合の組合員に適用されます。就業規則を上回る労働条件を定めた場合は、労働協約が優先します。職場の4分の3以上が組合員であった場合には非組合員にも適用されます。ある地域の同種の労働者の大部分が組合員であった場合には、労働委員会での手続きを経て、その地域の非組合員にも適用するようにできます。(地域的拡張適用)

◆労働契約(雇用契約)

 労働法上の使用者と労働者個人との契約です。労働条件などを労働者個人ごとに定めます。就業規則を下回る労働条件を定めた部分は無効となります。使用者は労働契約書を発行することが望ましいと労働契約法で定められています。「雇用契約」とは民法上で口約束の雇用契約も有効と定められているもので、労働契約とほぼ同じ意味です。

◆優先順位はどうなるのか?

① 労働組合法・労働基準法
② 労使協定
③ 労働協約
④ 就業規則
⑤ 労働契約
の順番になります。
労働基準法は最低限の労働条件を定めた強行法規であり、これに違反する就業規則や労働契約はすべて無効です。
労使協定である36協定が存在しない場合、あるいは期限切れである場合、就業規則に残業の規定があっても、労働契約に残業の規定があっても、残業をさせることはできません。
労働協約が就業規則や労働契約を上回る労働条件を定めている場合は、労働協約が優先します。
就業規則が労働契約を上回る労働条件を定めている場合は、就業規則が優先します。

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