なかまユニオンの介護福祉支部では、毎月1回交流会を行い、組合員の相談に乗ったり、必要な知識の学習会を行っている。
12月の交流会では、組合員の松谷(仮称)さんが労災のことで悩んでいるということだったので、労災の学習会を行った。
暴れる利用者
高齢者施設に勤務しているが、力の強い暴れる利用者がいるとのこと。松谷さんが最近、介護中にひっかかれて受傷した。松谷さんは医療機関を受診した。施設に労災ではないかと言ったところ、「検査結果が無いからわからない」という見当はずれの対応であった(この利用者は感染症の既往があるため、診察時に感染症の検査もしたが、感染直後には正確な検査結果が出ないため、一か月後に再検査となっている)。最近、他の職員も同じ利用者から暴力を受けて骨折するという事件も発生している。
学習会では、顧客からの暴力でケガをした場合も労災になるという点を取り上げることができたので、タイムリーであった。
事業主にはこのような事故の再発を防ぐ義務があるという論議をした。起きてしまったケガの労災を認めさせることが、まずはその一歩になる。
診察時に診断書をもらっていなかったので、まずは診断書をもらい、それを事業所に提出して労災にしてもらうように求めることになった。 以下が学習した内容。
◆労災(労働災害)とは
仕事中にケガをすること、または仕事が原因で病気になることです。
◆労災保険
労災の場合、普通の健康保険証ではなくて労災保険を使うことができます。労災保険での診療は自己負担額がゼロになります。また、労災が原因で会社を休んだ場合には、賃金の8割分の休業補償金がもらえます。もし労災が原因で後遺障害が残ってしまった場合には、障害給付金をもらえる制度もあります。医療機関の診察が無ければ労災には認定されません。
◆労災保険を使える仕事
適用されるのは「使用従属関係のもとで雇用されている労働者」です。無給のボランティアは対象外です。現場に出ない社長は対象外です。小規模経営の農家には制限があります。
個人事業主・零細企業事業主の場合は特別加入団体を通じて「一人親方の特別加入」をしておく必要があります。
◆本人の過失があっても労災になる
本人に過失があったからといって労災にならないということではありません。仕事というのはいずれも潜在的な「危険性」があり、それがたまたま発現した場合にケガをするというのが労災の考え方です。人間は過失をおかすものであり、過失があっても無くても「仕事だったのであえて危険性に近づいた」のであれば労災の対象になります。
◆顧客等の第三者によるケガも労災になる
顧客によってケガをさせられた場合も、「危険性のある顧客に仕事だったのであえて近づいた」わけですから労災の対象になります。後日労災保険が加害者に補償請求します。加害者に責任能力がない場合には、労災保険と監督義務者の間で裁判になることもありえます。
◆労災認定の手続き
労災を認定するのは労働基準監督署です。まずは本人と事業主とが労災であるという合意をするところから話は始まります。事業主に労災の手続き書類を発行してもらって、医療機関に持って行ってケガの状態とケガの原因との因果関係に矛盾が無いことを証明してもらうことになります。
時々、事業主が労災であることを認めたがらないことがあります。労災事故が発生すると事業主が支払う労災保険料が値上げされるからです(メリット制)。事業主が認めない場合、労働基準監督署から行政指導してもらうこともありえます。