不当解雇は許さない社会を変える職場分会・支部の取り組み

若者が人らしく働ける社会を

6月13日、「6.13 若者が人らしく働き続けられる社会の実現をめざすつどい」が、エル大阪にて開催されました。主催は、「ワツコ(株)の試用期間解雇の闘いを支援する会」(略称)と、「誰でも入れる労働組合 なかまユニオン」が共催し、Zoomでも、全国11ヶ所と同時に繋がっていました。

2部制で開催され、第1部では司会、主催者の挨拶のあとに「ワツコ争議とは」と題して、ワツコ争議の当事者Aさんへのインタビュー動画放映。ワツコ(株)での暴力事件から不当解雇、なかまユニオンに加盟し、支援の会が結成され、現在に至るまでのAさんの思いが込められた動画でした。その後、当事者Aさんの争議の現状報告がありました。

続いて、10数年人事として人材ビジネスに携わっておられたワツコ争議の当事者Aさんの兄より「若者の雇用と人材ビジネス、組合・なかまユニオンの存在意義」と題した特別報告。

「手軽にたくさんの労働者を雇用したい」という企業側の考えと、人材紹介側の「労働環境が良い会社というよりも、報酬が高い会社にマッチングしたい」という両者の思惑に板挟み状態になり、その結果、若者がぞんざいに扱われているという実情が明らかに(※後段に講演要旨)。

しかし、数年前から企業の人事研修で、「労働組合が突然団体交渉に来たらどうするか?」という、講師の発言が増えて来たとのことで、企業は忖度しない、労働者の立場に立つ、外部のユニオンを非常恐れていると話されました。

その後は、質疑応答、休憩を挟んで第2部開始。

2部では、「若者が人らしく働き続けられる社会や職場を作ろう」と題して、男女計6名の若者が現場での悩みや、現在ユニオンで活動している事や、今後の抱負について語られました。その中でなかまユニオンへの加盟を決意する方も1名誕生しました!

つどい終了後は、今日初めて会ったばかりの若者同士で自分の職場の問題や、悩みを話し合う姿が見られていました。今後も労働問題に悩む若者の学びの場、交流の機会として引き続き、今回のようなつどいの場を設けていけたらと思います。

講演要旨:人材紹介業の実態・組合活動の重要性について 神居 乃拳

自己紹介 

若者の雇用を考える集いに参加いただきありがとうございます。私はワツコ株式会社による不当解雇事件の被害者の兄です。妹の事件をきっかけになかまユニオンに加入させていただいています。いつも妹がお世話になっております。

ワツコ試用期間解雇と人材紹介会社

今回は妹の不当解雇をきっかけに改めて若者の就労環境の悪化と人材紹介業の実態には相関関係があると気づかされました。私は現在はフリーランスライターをしていますが、フリーランスになるまでの約10年間、企業の人事・採用担当者として1,000名を超える若者の面接を行った経験があり、若者の採用に深く関わってきた経験があります。

若者の就労環境の悪さという点に関しては出来るだけ安く若者を調達したいという企業の本音があります。実際、今回、不当解雇の被害者が活用した人材紹介会社であるJ社という人材紹介会社では若者が試用期間内などの早期に離職した場合は人材紹介料を返金するという規定をアピールしていました。会社と社員の間で労使紛争が起こってもすぐに解雇にすれば採用経費が無料になるということで軽はずみな解雇を誘発しており、非常に問題があります。

人材紹介業の根本的な問題

また、人材紹介業には根本的な問題があります。

労働基準法6条では中間搾取の排除が法律で設定されており、他社の就労に関して第三者が転職希望者から利益を得ることを禁止しています。そのため、派遣会社や人材紹介業に関しては応募者本人からお金を取ることができず、結果的には会社から紹介料を得る仕組みになっています。

例えば今回のワツコ株式会社の例を挙げると、J社という人材紹介会社が被害者をワツコ株式会社に人材紹介していますが、被害者本人からはお金をとらずにワツコ株式会社から100万円程度の紹介料を受け取っています。100万円程度というと大金のように思えますが、本来はもっと大手のdodaやリクルートエージェントなどの転職エージェントを活用した場合は採用経費は倍の200万円以上の紹介料がかかることが相場であり、J社はかなり格安で人材紹介を行っている転職エージェントです。

この事実からも出来るだけ安く買いたたいて若者を採用したいという思惑が見えます。J社などの若者限定の転職エージェントは一般的な転職エージェントに比べると破格の値段で若者を大量に調達できるため企業からは人気があるということです。

人材紹介業や派遣会社がいくら転職希望者に対してサービスを尽くそうとしても結局お金を出すのが人材を採用する企業である以上、求職者が満足できるような転職を実現することは難しいです。実際、私が採用担当者として人材紹介会社と派遣会社を活用していた際には求職者側の意向を反映するというよりも人材紹介業者は最終的にお金を出す顧客である企業の方を向いてサービスを展開していました。

人材紹介会社や派遣会社には人材をただ右から左に流すだけで大金をノーリスクで得る仕組みがあります。

企業の採用担当者側の問題

企業の採用担当者側からすると長期の不景気やリーマンショック等の間に採用ノウハウを欠如してしまっており、本来は人事部の機能として最も重要な人材の採用をアウトソーシングして人材紹介業者に依頼して依存しているという現状があります。

ハローワークであれば無料で使えるのではないかという考えもありますが、現実問題としてハローワークに求人を出したところでなかなか応募は来ません。

若者の就労支援という点に関して言えば人材紹介会社ではなく本来はハローワークが頑張るべきなのですが実態として企業の採用担当者はハローワークを活用したいと思える状態ではなくなっています。経営者に「さっさと人を連れてこい」とプレッシャーをかけられている状況においてハローワークの悠長さでは対応しきれません。

新卒採用段階ではリクナビやマイナビといった就活サイトにお金を使い、中途採用になれば転職エージェントや派遣会社などの人材紹介会社にお金を使い人材の採用という最も重要な業務で楽しようという企業側の怠慢が現在まで続いております。

これから新卒で就職する方も含めてリクナビやマイナビなどを活用された方がいると思いますが、利用料金は無料だったのではないでしょうか。リクナビやマイナビもそうですが人材紹介ビジネスでは企業側がお金を人材紹介会社に支払うことで成り立っています。

また、リクナビやマイナビなどの就職サイトなどにおいてはお金を多く支払った企業ほど求職者の目につく仕様になっており、決して良い企業が注目を集めているわけではありません。

若者の雇用環境の改善には

若者の雇用環境の改善にはまず企業側が自社の力で人材を集めることに力を入れることを促していくことが重要であり、安価な労働力を提供するということを第一の価値としている就職支援会社の安易な活用を避けさせることが重要です。

また、同時に就労環境向上のためには外部労働組合活動の重要性を強く訴えたいと思います。私が10年間人事を経験した中で感じているのは経営者の中には「ユニオンが来ることを恐れている」という経営者もいるということです。社内の労働組合が弱体化していることもあり外部労組という純粋に労働者の立場にたって団体交渉をする組織がユニオンしかないという現状があるからです。社内の労働組合である企業内組合は良くも悪くも経営陣のいうことを最終的には絶対に呑む団体と化しており、経営者も怖がっていません。

むしろ、私が絶望的だなと感じたのは労働組合の委員長経験者が組合を辞めたあとに人事部長や人事課長といった経営側に取り込まれていくという経営側に寄り添いすぎる組合の実態でした。労働組合の委員長を経験することが出世コースになってしまっているんですよね。これでは労働者救済は全て建前になるしかありません。人事に来れば労働組合と闘争する立場になるのですから前委員長に対して強いことを労働組合も言えなくなります。

骨抜きになっている企業内労働組合よりも外部労組であるユニオンのほうが真に労働者の立場にたち戦えるポテンシャルを持っているのです。

また外部労組活性化だけではなく就職を希望する若者の企業を見抜く目を確かにすること、ブラック企業の情報を入社前に知ることができるような情報提供の仕組みを考えていくことも重要だと考えています。

ワツコ株式会社のような企業に入社してしまい、会社で殴られた挙句に解雇されるような若者を出さないためにも頑張っていきたいと考えております。

タイトルとURLをコピーしました