残業代を支払え職場分会・支部の取り組み

(医)神明会、不払い残業代を請求する裁判は新たなステージヘ

2月22日、医療法人神明会に対して不払い残業代を求める第6回目の裁判が、大阪地方裁判所608号法廷でありました。16名の原告のうち、およそ半分の7名が裁判に参加。傍聴席には、人があふれるほど傍聴者が詰めかけ、入れない方もいるほどで、市民の関心を大きく集めていることが示されたと思います。今回は、前回提出された法人側の反論に対して、こちら側から反論する書面を提出。法人側が介護に従事するスタッフの現状を全く理解していない上で虚偽の反論していることや、虚偽の弁論を繰り返していることを追求しました。また、前回の裁判後、地裁から提案のあった和解については、応じず、組合側が要求する労働時間管理の仕組みを変えることについて法的判断が下されるまで、闘い抜くことが確認されました。

和解に応じない理由

私たちは、不払い賃金の補償だけでなく、働きやすい職場を作っていくことを求めています。その為に過去の未払い賃金を取り戻すだけでなく、働いた分の賃金は払う、「タイム打刻で賃金計算すること」を求めています。しかし、今回被告側は「労働時間管理は、団体交渉で話し合うこととしかいえない」とし、明言を避けました。このことからも会社が私たちの訴えに正面から向き合おうとしていないことは明らかです。

明白な虚偽!15分切り上げていたというのはウソだ

前回の法人側の主張で、「残業計算は、15分を切り上げて計算している」と主張してきました。しかし、それは明白な虚偽です。

例えば、原告の一人は2021年9月24日に17時30分から17時50分の残業を記載し、時間が20分であった為、0.3hと記載したが、法人側はこれを0.25hと斜線で訂正し、15分の労働時間として計算していました。

また、もう一人の原告についても、2020年5月16日のタイムカード上の代謝時刻が22時13分となっていますが、勤怠届では、22時となっていました。そして同月18日のタイムカード上退社時刻が20時19分となっていますが、勤怠届では、20時となっていました。

このことからも、勤怠届について、15分の切り捨て扱いがされていたことが読み取れますし、法人側が15分の切り捨て計算を行っていたことは明らかです。

現場の実態を把握していない法人側の反論

① 介護補助の業務について

法人側は、見守り業務とシーツ交換業務が両立可能であると主張しています。しかし、利用者の個室はそれぞれ壁で囲まれており、個室内部から見守り業務を行う食堂や共用廊下を目視できる構造にはなっていません。
見守り業務とは、利用者の突発的な行動により転倒事故等が生じないように、利用者が食堂やホールにいる際に、利用者の行動を常時観察しておく業務の事です。利用者の8割は認知症に罹患しており、突発的に立ち上がられたり、テーブル上の物品を口に入れたりすることがあります。

また、利用者のほとんどは要介護認定を受けており、体幹機能の衰えや筋力の低下が著しい方が多く見守りなく、突発的に立ち上がり、歩行された場合、転倒し重大な事故が起きる可能性があります。
何か物音や叫び声があれば、すぐに駆け付けることも出来ますが、利用者が突発的に立ち上がったり、テーブル上の物品を口に入れるなどでは、大きな物音がしないことも多くみられます。以上のことからも、各居室に入って行うシーツ交換業務と、見守り業務の両立は不可能と言えます。

② 夜勤者の業務について

夜勤時間の業務について日勤のスタッフに引き継ぐべきであるとの主張が法人からありました。
これらの業務を担当する介護助手の職員は、始業時間前から業務担当の割り振りなどを行っており、始業時間からは、昼食のお茶の準備や他の利用者のシーツ交換、当日入居者のベットメイクを担当しており、夜勤時間帯に生じたシーツやベットの汚染処理業務について対応する時間は全くありません。

また、施設全体としても、常時人手不足で日勤のスタッフが2名の日があります。2名しかスタッフがいない日は、一人がリーダー業務について、スタッフ間の申し送り業務を担当し、

残り一人で、日勤時間帯の業務の準備を行う必要があるため、実情として夜勤時間帯の汚損処理業務まで行う時間は存在しておらず、施設では夜勤時間帯の汚損処理業務は夜勤スタッフが対応することが慣例となっていました。法人の主張は、施設の業務実態を無視したものであるといえます。

組合つぶしを許さない

未払い賃金訴訟を開始してから、組合員をターゲットにした法人からの退職強要が続いています。ある原告は、突然、呼び出しを受け管理職5名による圧迫面談が行われました。これは他の職員に対しては決して行われないような規模での面談でした。他にも現在進行形で原告代表に対する降格処分などの差別的取り扱いが続いており、
組合としての抗議文を本日法人に提出。労働委員会への救済申し立てなど、あらゆる形での抗議の形を取ることを通告しました。

裁判終了後の報告集会では、「自分たちの会社を守らないといけないのはわかるが、「そこで働いているスタッフのことを大事にしていかないと会社は回っていかないと思う」「裁判で本当に色々変えていって、いい法人になっていってほしい」「上の人は現場をほとんど見ていない上で、数字だけを見たり、人が足りていると言っていることについて、すごくおかしいと思う」など原告からの意見が上がりました。

次回裁判は、5月9日11時半606号法廷で予定されています。ぜひ、ご参加ください。

櫻井聡弁護士
中西とも子さん

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