
なかまユニオン介護医療福祉部では、定期的に支部会議および「つながる交流会」を開催し、組合員一人ひとりの現場の状況共有や、労働相談から見えてくる社会的な課題について議論を深めています。
先日の会議では、参加者が安心して発言できるための「グランドルール」を全員で確認したのち、深刻化する労働現場の実態や、近年相次いでいる福祉関連事業所の突然の閉鎖(倒産)問題について、生々しい体験談をもとに話し合いました。
誰もが安心して参加できる場づくりのために
会議の冒頭では、私たちの生活する社会にある無意識の偏見や差別に気づき、改善を目指すための「約束事(グランドルール)」を読み上げました。
性別、ジェンダー、障害、年齢、国籍、職歴などに基づく差別を許さず、全員が対等な参加者としてリスペクトし合いながら意見交換を行うこと、そして万が一ハラスメントが起きた際は周囲が適切に関与して仲間を守ることを、改めて全員で確認しました。
深刻化する労働相談:過重負担と対話の重要性
労働相談の現状報告では、福祉・看護の現場や障害者雇用における新たな相談事例が共有され、それぞれの具体的な解決へのプロセスが詳しく報告されました。
• 責任の丸投げによる心身の疲弊と、退職後の追跡サポート:
専門的なノウハウを持たない異業種の母体企業(製造会社)が、訪問看護事業を立ち上げた事例です。現場を任された看護師の組合員に、全ての業務や利用者とのトラブルの責任が丸投げされ、過度な負担から心身を壊して退職を余儀なくされました。組合では、退職手続きが会社側で適正に行われているかどうかの確認相談を進めており、何かあった際のセーフティネットとして継続的なサポートを行っています。
• 対話を通じて現実的な解決へ:AIの回答に振り回された事例:
ハラスメントに直面し、体調を崩して相談に訪れた事例も報告されました。当初、相談者はインターネット上の対話型AIが提示した「対応例」を信じ込み、過度な損害賠償請求に囚われてご本人の認識に大きなギャップが生じていました。しかし、組合が丁寧な面談を重ねて「まずは働き続けることが一番の希望」であることを確認。AIの画一的な回答から切り離して現実に即した対話ができるようになり、相談者からも「相談しに来てよかった」との声が寄せられています。
突然の事業所閉鎖:お昼休憩の瞬間に告げられた解雇
後半の交流会では、「相次ぐ就労継続支援A型事業所の閉鎖と障害者雇用の課題」をテーマに、実際に突然の事業倒産を経験した組合員からの貴重な報告がありました。
ある日、いつも通りに出勤して仕事を終え、お昼休憩に入ろうとした瞬間、突然スタッフから「お昼ご飯を食べずに今から話を聞いてください」と呼び集められました。そして、「本日ただいまをもって事業所を閉鎖します。パソコンも触らないでください」と、作業のすべてをその場で強制ストップさせられたのです。
組合員は、過去の組合活動での学習会の記憶を頼りに、その場ですぐに以下の3点を会社側に問い質しました。
1. 「事業所の閉鎖」なのか「会社の倒産」なのか:
会社自体の倒産であるため、別部門への異動や雇用の継続はないことがその場で確定しました。
2. 社長と連絡はつくのか:
経営者が行方をくらますリスクを想定しての質問でしたが、連絡はつく状態であることが確認されました。
3. 未払い賃金や今後の生活補償はどうなるのか:
会社側からは、経営悪化により「退職金が支払えるうちに店を閉じる判断をした」との説明があり、当日中に5ヶ月分の賃金に相当する額を退職金として口座に振り込むこと、近隣の転籍先リストの提示などがなされました。労働者にとっては青天の霹靂であり、超ドライな経営判断ではありましたが、一見すると世間の倒産事例の中では条件面での配慮がなされているように見えました。
ハローワークでの緊迫した交渉:知らぬ間に外されていた雇用保険
しかし、この突然の閉鎖劇の後に、さらに深刻な問題が発覚します。
後日、労働者が失業手当の手続きを行うために会社へ「離職票」の郵送を求めたところ、一向に届かないため再度事業所へ赴き問い質したところ、本社からの回答として「雇用保険から除外されているため、離職票は発行できない」と告げられたのです。
「雇用保険に入っていたはずなのに、なぜ失業手当がもらえないのか」と納得がいかず、会社が再発行した給与明細を持って、ハローワークの窓口へ直行しました。窓口では担当者を変えながら数時間に及び粘り強く折衝を行いましたが、そこで突きつけられたのはあまりにも冷酷な「制度の実態」でした。
実態を調べた結果、体調不良による欠勤やゴールデンウィークなどの長期休暇が重なったことで、実際の労働時間が「週20時間未満」となる月が1年間続いており、制度の規定上、自動的に雇用保険の対象から外れていたことが判明したのです。
契約上は週20時間以上であっても、実労働時間が下回れば機械的に排除されるという仕組みであり、会社側から事前の説明や通知は一切ありませんでした。最終的に事業所の責任者から「伝えるべきことを伝えていなかった」と謝罪はあったものの、失業手当が受給できないという過酷な現実だけが残されました。障害特性や体調の波に寄り添うべき福祉の現場において、機械的な一律の基準で労働者がセーフティネットから排除されてしまう、現行制度の冷酷な死角が浮き彫りとなりました。
技術革新の影と福祉ビジネスの闇
今回の事業所閉鎖の背景には、昨今の急速なAI(人工知能)技術の発達が深く関係していると分析されています。
この事業所で行われていた主な業務は、利用者が買い物したレシートの画像を見ながら家計簿へデータ入力する作業でした。レシートの様式が多様なため、これまでは障害者が手作業で対応していましたが、この1年でAIが自動識別できるようになり、業務単価が大幅に下落。作業単価の高い仕事が激減し、経営困難に拍車をかけたと考えられます。
さらに、こうした国の補助金制度や障害者雇用の仕組みを悪用し、利用者を動かすことで国からの補助金(半年間の雇用補助など)を騙し取ったり、利用者を囲い込んで手数料を搾取したりする「悪質な福祉ビジネス」の横行についても議論されました。本来、社会参加や福祉の理念のもとに存在するはずの制度が、株式会社の利益追求の道具とされ、儲からなくなればドライにトカゲの尻尾切りが行われる資本主義の歪みが現場に押し寄せています。
困ったときは、すぐにユニオンへ連絡を
体験した組合員からは、「突然『倒産』と言われたとき、すぐにユニオンの担当者に連絡をした。繋がっていると思えるだけで大きな安心感があり、慌てずに会社側を質問攻めにして必要な情報を開示させることができた」という力強い教訓が語られました。
声を上げることや、自分の置かれた不条理な状況を説明することが難しい立場にある労働者に代わり、私たち税金を払っている市民や労働組合が声を上げ、合理的配慮のある真に豊かな社会を目指していく必要があります。
不当な解雇や、突然の事業所閉鎖、職場のハラスメントでお悩みの方は、一人で抱え込まずに、いつでもなかまユニオンにご相談ください。






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