最低賃金1500円に

最低賃金の引き上げを求めて、労働局と大阪商工会議所に申入れを行いました

 コミュニティ・ユニオン関西ネットワークは、2月9日、大阪労働局と大阪商工会議所に最低賃金の引き上げの申し入れを行いました。

労働局:賃上げを可能にする環境整備のための諸施策の紹介

大阪労働局は参加者全員が入れる会議室を用意してくれました。ユニオン側は、物価の異常な高騰に対応して、最低賃金を年に1度だけではなく、年度都中にも再改定するように求めました。労働局側は、それは難しく、代わりに、少しでも企業側が賃上げできるように使用可能な援助制度を紹介するチラシを作成するなど大阪独自の取り組みを行っているという事でした。

要望:破綻せず暮らせる賃金を

今回、大阪労働局ならびに大阪地方最低審議会委員に対して、コミュニテイーユニオン関西ネットワークが、『最低賃金の大幅引き上げを求める申し入れ』と題して申し入れた文書は、以下のようなものです。

私たちは、滋賀・京都・大阪・奈良の2府2県、13の「誰でも、ひとりでも入れる労働組合」によるネットワークです。

 私たちも、全国各地の労働団体も、毎年のように最低賃金の大幅引き上げを求めて申し入れ等を行っています。確かにこの数年、最低賃金の引き上げ額は、過去に較べると大きくなっており、私たちも一定の評価をしています。とはいえ、四十年ぶりとされる歴史的物価高騰もあり、依然として「健康で文化的な生活」を維持できる水準にはほど遠いのが現実です。

大阪府の時給1,064円は、フルタイムで働いても額面17万円程度であり、税や社会保険料を差し引いた後のいわゆる「手取り」では14万円前後となります。単身者であればまだしも、子どもなど扶養家族がいれば、「ただ飢え死にしないだけ」という水準でしかありません。子どもの学校でのクラブ活動、塾や習い事、親族や友人の慶弔といった費用の捻出も困難で、誕生日やクリスマスのプレゼント、家族旅行などのささやかな楽しみすら「夢」でしかありません。単身者であっても、貯蓄など全くできませんから、けがや病気で仕事を数日休めばたちまち生活は破綻。エアコンが壊れた時に買い替えができないと、近年の酷暑では生命の危機に直結します。つまり、今の最低賃金は、「文字通りの意味でただ食べていくだけで精一杯」「何事もなく健康で過ごせている時には辛うじて生活が成り立つが、予期せぬトラブルがあれば直ちに破綻」という水準でしかありません。

最低賃金法は、その目的を「賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与すること」としています。残念ながら、現在の最低賃金は「労働者の生活の安定」に程遠いことはもちろん、三十年にわたるデフレから未だに脱却できないことから明らかなように、「国民経済の健全な発展に寄与」することもできていないのが現状です。

現今の物価高騰は、食料品や電気、ガス、ガソリンなど、生活維持に必須の部門で特に顕著であり、とりわけ低所得層において、極めて深刻な打撃となっています。いわゆる非正規労働者のうち、かなりの部分が最低賃金、あるいは最低賃金をわずかに上回る水準の賃金で働いています。最低賃金を大幅に引き上げることは、こうした低賃金労働者の賃金の大幅引き上げに直結します。

 私たちは、最低賃金を「全国一律で時給1,500円以上に」と求めています。最低賃金は、「年に一度あるいは数年に一度は起こるであろう、ちょっとしたアクシデントがあっても、生活破綻せず暮らしていける水準の賃金」でなければ、そもそも設定する意味がありません。フルタイムで働いて「手取り20万円」が一つの目安と考えられますが、その水準が、まさしく時給1,500円なのです。人間らしい生活をするための、ギリギリ最低限度の賃金水準。私たちが求める「時給1,500円」とは、その程度のささやかなものに過ぎませんが、全国的に見れば比較的高水準の大阪府ですら、40円程度の今の最賃引き上げのペースでは、1,500円に到達するには約10年もかかってしまいます。せめて「数年」程度で1,500円に到達するよう、最低賃金の大幅引き上げを、強く求めるものです。

「経営者も賃上げしたいと思っている」と言うものの

 大阪商工会議所は面会人数を5人に制限した上に、入れなかった人は商工会議所の建物の外で待つようにと会場内から排除しました。

 要請においては、大阪商工会議所としては、ほとんどの経営者は賃上げしたいと思っているとの事でした。しかし、賃上げできる体力があるところとないところの格差が広がっているとの事でした。より根本的な問題は、6割ほどの企業(多くは中小企業)が労務費を価格に転嫁できず賃上げの原資がない事であり、適正に転嫁できるように「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを広げるなど問題解決の環境整備に取り組んでいるとの事でした。ただ、立場の弱い中小企業をまとめて大企業に対する交渉力を高め、労務費の転嫁を認めるように果敢に大企業と交渉できるような取り組みを、大阪商工会議所としても独自で進めるべきであると考えますが、そういう取り組みは弱いようでした。参加者に対して「大阪商工会議所会員企業で労務費を価格に転嫁できていない企業はどれくらいの割合で、業種別にみればどういう結果になって、価格に転嫁できない原因は何か」と質問しましたが、そのような調査はやっておらず、「全体と同じようなものですよ」という以上の答えはありませんでした。

 また、最低賃金の引き上げについては、「強制力を伴うものですから、何百円というような大幅引き上げには反対です」と、そこだけは力強く言い切られました。

要望:会員企業に大幅賃上げ促進を

 『賃金、特に非正規労働者の賃金の大幅引き上げを促すよう求める申し入れ』と題して、大阪商工会議所に提出した要請書は、以下のようなものです。

私たちは、滋賀・京都・大阪・奈良の2府2県、13の「誰でも、ひとりでも入れる労働組合」によるネットワークです。
(前文省略)

中小企業や個人商店にとって、賃金の大幅引き上げには、経営上の困難もあるものと拝察します。けれども、一方で、各企業・事業主が人件費・賃金を抑えようとしてきたことが、結果として社会全体としての購買力の低下を招き、デフレ状況が長年続く大きな要因の一つとなっていることもまた事実です。大きな利益を上げている企業のみ、あるいは、勇気ある決断をした企業のみではなく、法定最低賃金の大幅引き上げにより、一斉に足並みを揃えて大幅賃上げに踏み切ることで、社会全体の購買力を高め、企業の業績を浮上させ、さらなる賃上げが可能となり、企業業績を一層押し上げる・・・という経済の好循環が生まれます。

事業者の負担、経営上の困難については理解できますが、まずは、政府と公正取引委員会が、独占禁止法や下請法により、大企業による優越的地位の濫用を厳しく取り締まり、人件費の上昇を販売価格に転嫁できるようにすること、次に、必要に応じて中小企業・小規模企業への直接支援(助成金など)を設けること、等により、克服できるし、また克服せねばならないものと考えます。


貴会議所が「パートナーシップ構築宣言」の拡大・深化に努めておられることは、私たちも大変すばらしいことだと高く評価しております。また、日本商工会議所が日本経団連、経済同友会と連名で「『構造的な賃上げによる経済好循環の実現』の要請」を取りまとめ、会員事業者に対して周知されたとも聞き及んでおります。貴会議所として、会員企業の皆さまに対し、積極的な賃上げを促していただきますよう、お願い申し上げます。

南森町・天満駅で街頭宣伝

 申入れの後は南森町交差点、JR天満駅前で情宣活動を行いました。チラシ受け取りはあまり良くありませんでしたが、チラシを見て話しかけてこられる方も何人かありました。

大阪労働局に申入書を提出
賃上げを検討する企業への支援制度などを紹介するチラシ等を大阪独自で作成し配布しているという
大阪商工会議所に対して申入書を提出
南森町で宣伝行動
天満駅で宣伝行動
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