福祉・医療

「辞めてくれないかな」と言われた時 介護福祉交流会

 2023年7月20日、介護福祉つながる交流会を行いました。今回のテーマは「退職勧奨と闘うために」です。


 最近、大阪府にあるY訪問看護ステーションで退職強要事件が発生しました。なにげない言葉の退職勧奨から始まり、しつこく退職をすすめられ、ついには「〇月〇日で辞めてもらう」という解雇事件に発展しました。当該の看護師はなかまユニオンに加入して解雇撤回を求めて立ち上がりました。


 「退職勧奨」とは、「君、辞めることとか考えてないかなあ」と上司が退職をすすめてくることです。退職勧奨は辞めたくなかったら断ればよいだけなのですが、次第に違法な脅かしである退職強要になり、ついには解雇に至ることもあります。このような時は、のちの団体交渉や裁判に備えて証拠を残すことが大切です。


 交流会の中では、「特定の労働者にミスの報告書を何回も書かせることが職場であり、それを『クビだ』と告げる材料にするのではないか」という懸念の声が出されました。ミスの報告書は、ミスを繰り返さないために職場改善の話し合いをするためのものならば良いのですが、退職強要のために使うのはパワハラであり、違法なことです。


 交流会後半の職場交流では、ある高齢者施設でワンオペが当たり前になっているという実態が報告されました。夜勤だけではなく、昼間も一人で10人のお年寄りを見ないといけない施設があるのです。これでは事故を防げません。
 他の高齢者施設に勤務する介護士からは、「ワンオペは無理。職員が走り回ると高齢者はそれを見て興奮してしまうので、走り回る人以外に高齢者をなだめる人が必要。二人は必要。」という指摘がありました。


 あまりの人手不足の中で、職場では「これじゃ労働組合を作るしかないなあ」という会話が当たり前のように出てきているという話もありました。なかまユニオンは、介護現場の悩みに応えて、職場を良くしていくために何ができるか、みんなで考え、行動に移していきます。

■資料 学習会・退職勧奨と闘うために 

 介護福祉つながる交流会 2023年7月20日

 会社の上司が「君、辞めた方がいいと思わないか」とささやいてくることがあります。「えっ?何のこと?」とびっくりします。「私、何か悪いことをしたのかな」と不安な気持ちになります。このことを「退職勧奨」と言います。さあ、その時、何をするべきなのでしょうか。

◆解雇(クビ)は、そんなに簡単にはできないことを肝に銘じよう
 会社には解雇権があります。しかし、労働契約法16条により、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」は「解雇権の乱用」であり、解雇を行うことができません。
 法律により、また、これまでの労働組合の裁判闘争による判例の積み重ねの中で、解雇は厳しく制限されています。退職勧奨は何回も繰り返される中で次第にトーンがきつくなり、圧迫感の有る違法な退職強要に変わり、さらには解雇へとつながることもあります。しかし、そう簡単にはクビにできないことをふまえて、対策を考えましょう。

◆普通解雇と懲戒解雇
普通解雇とは、労働者が定められた仕事をしなかったことを理由とする解雇です。この場合、そのことをあらかじめ就業規則に書いて労働者に知らせ、「こういう場合は解雇になるよ」と示しておかなければなりません。常識的に考えて、無断欠勤が一か月間も続けば、普通解雇の対象になります。しかし、単に「思っていたより能力が低い」「勤務態度が悪い」「自分本位の主張をした」「上司に対して反抗的な態度があった」という程度では解雇理由になりません。
 懲戒解雇とは、悪質なパワハラなど会社として罰を与えなければならないほどの悪事を働いたことを理由とする解雇です。この場合も就業規則にその旨を書いておかなければいけません。仕事上のミスとか失敗は誰にでもあることなので、そんな理由での懲戒解雇は解雇権の乱用とみなされ、無効です。

◆退職勧奨は退職強要に変わっていくと予想したほうがいい
 退職勧奨は、断りたければ断ればいいのです。あくまでも労働者の自由意志です。あいまいな態度だと、しつこく言われ続けます。はっきりと「辞めることは考えていません」と言った方が良いのです。
断っても何度もしつこく言ってくるとか、多人数で取り囲んで圧迫してくるとか、辞めなければひどい目にあうぞと脅かすようなことは「退職強要」であり、違法です。退職強要は「自由意志を制圧する」違法行為なので、労働者が訴えて損害賠償を会社が支払ったケースもあります。
大切なことは、退職強要が行われた場合に、証拠を残すということです。のちに裁判や団体交渉になった時に会社側は、単に退職勧奨を行っただけだとしらばっくれることが多いのです。ですから、退職勧奨があったら、次は退職強要が始まると考えて、ボイスレコーダーを準備するなどして、証拠を残すことを考えましょう。何月何日何時ごろに誰からどんな退職勧奨があったか、必ずメモに残しましょう。
また、退職勧奨とあわせて、他の部署への異動やパワハラなどのストレスがかかることもあります。退職勧奨があったら、一人で悩まずにユニオンのなかまに相談して対策を考えましょう。

相談先 大阪の労働組合 なかまユニオン 06-6242-8130

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