1ヶ月前の整理解雇の発表
整理解雇事件について、当事者組合員の手記を寄せていただきました。
2023年年末、大阪市内の小規模内科病院で、病棟閉鎖・職員全員の整理解雇事件が発生しました。整理解雇の1か月前という急な発表で何の補償もないどころか、内科責任者による口頭の発表で、雇用主である院長は説明にも出てこないといういい加減な発表でした。こういうやり方に疑問を持った複数の看護師がなかまユニオンに加入し、解雇の撤回と解雇理由の説明、撤回できない場合は生活保障、職員を混乱させ不安におとしいれていることについての謝罪を求めて団体交渉を申入れました。
整理解雇4要件を満たさない解雇は無効
30日前に解雇を予告すれば、解雇予告手当を支払わなくてよいということだけを知っていて、30日前に解雇すれば理由を問わず解雇できると思い込んでいる経営者がいますが、それは大きな間違いです。解雇には合理的理由が必要であり、社会的相当性を踏まえたものでなければ、無効です。今回の件は、経営状況が苦しくなって労働者を解雇する整理解雇にあたりますから、「整理解雇の4要件」を全て満たしてなければ、なりません。4要件は、①整理解雇の必要性②解雇回避努力③人選の合理性④説明責任を果たしたかという4つです。
不備を認め謝罪
今回の甲乙病院の団体交渉にあたっても、この4つの要件を満たしているか、団体交渉で追及しました。病院側も4つの要件それぞれについて説明しましたが、団交に出された資料は不十分であり、さらに資料提出を求めました。団体交渉の議論の中で、病院の賃料の流れなど不自然な点がいくつも明らかになってきました。
また、発表の手続きについても追及しました。整理解雇の発表をなぜ院長が直接しないのか、なぜ口頭でしか説明しなかったのか、なぜ、年末の時期に1ヶ月前の発表だったのか、追求していきました。病院側としては、不備を認め謝罪することになりました。
団体交渉は3回開催しました。もっと徹底追及する道もありましたが、問題の早期解決を優先し、解決金の支払いと最終的合意書で謝罪することを確認して、終結することにしました。
従業員を軽視してはいけない:手記
昨年12月中旬、勤めていた甲乙病院(仮名)よりいきなり前触れもなく、「1月15日で病棟閉鎖し病棟スタッフ全員解雇」という話を口頭にて聞き、看護師の私は呆然となった。確か12月13日だったと思う。ギリギリ1か月前に言ってきたのだ。
責任者である院長は全く病棟に現れず、内科責任者に数人で詰め寄るも理由はたった3文字、「コロナ」とだけ。謝罪の文言は一切なし。年末年始をはさんだこの時期に急に仕事など探せるはずもなく・・・。「なぜもっと早く言ってくれなかったのか」と問うも、「ギリギリまで自分はやれると思い一生懸命頑張ったのだ」との一点張り。「有給は買い取る」と言っておきながら「全部は買い取れない」と数人呼び出し急に解雇したり、横暴さに怒りが沸き、どうすればよいか、なんとか懲らしめられないかと藁をもすがる思いでなかまユニオンにダメもとで相談に行った。なぜダメもとだったのかと言うと1か月前にいえば法的には問題なく解雇できるから。
しかし、ユニオンの担当者さんは「これは突っ込み所がいっぱいある」とおっしゃって下さり、甲乙病院相手に団体交渉を行うことにした。直属の雇用者の院長に対し、謝罪と3か月分の給与を要求する事として。
団体交渉の意味が理解できていなかったのか、「説明会をする」などの返信が院長からではなくなぜか内科責任者から来たり、団体交渉になるまでも時間を要したが、やっと2月14日に1回目の交渉になった。長期になりそうな感じもあり精神的にもくじけそうになったが、担当者さんは強く相手に立場をわからせるよう訴えてくださった。
きっと私たりだけでは邪険にされていたことと思う。担当者さんパワーで、団体交渉は3回で終了し、謝罪と1か月分の給与相当を支払う事を提案されこちらも満額とはいかなかったがそれで折れ3月6日に解決した。
たった一言、解雇にあたって「急で申し訳ない」の言葉さえあれば、こんな事にはならなかったのに…。言葉って大事だと本当に思う。従業員を軽視してはいけない。
謝罪をここまでしないと述べなかった院長は残念な人だが、協定書には謝罪の言葉が書かれた。団体交渉で勝ち取ったこの言葉の意味は大きいと感じている。尽力してくださった担当者さんには感謝の気持ちでいっぱい、本当にありがとうございました。そして一緒に戦って下さったみなさん、これからもよろしくお願いします。