2024年4月19日、10年にわたってパワハラ・モラハラを受け続けた女性労働者が、団体交渉の場で、会社に対して、一つの回答を突きつけました。株式会社ひめじやと代表取締役、そして、代表取締役の忠実な下僕としてパワハラ・モラハラを続けた実行犯の管理職に対する損害賠償請求訴訟です。
パワハラ対策で抜けている物
4月19日、㈱ひめじやの社屋で開かれた団体交渉のテーマは、春闘賃上げ要求に対する回答、パワハラ防止法を受けて社内体制をどうするか、ひめじや分会組合員の業務をどうするか、でした。会社側の団交参加者は社長と弁護士の2名。まず、春闘の回答が示され、会社の経営状況に関する説明が貸借対照表を示しながらありました。
続いて、パワハラ防止法を受けての社内体制の整備問題については、新たに就業規則に追加するパワハラに関する条文の提案が団交に先立って組合に届けられていました。条文は2条あり、1条は、パワハラをやってはいけないということを書き、パワハラとは何かという定義を書き、パワハラの具体例としての6つの類型を書いていました。また、もう1条は、パワハラ相談窓口を外部の社会保険労務士事務所に設置しどのような内容をどういう手続きで相談し、窓口が何を行うか等の運用の仕方を書いた条文です。
それ自体はまともな内容でしたが、抜けている内容があります。それは、パワハラを行った者に対して厳正に対処するという内容です。パワハラは懲戒に該当するし、具体的にどういう懲戒を受けるのかを就業規則に規定しておかなければなりません。会社の就業規則には、セクハラが懲戒解雇事由に該当するとの規定があります。それにも関わらずパワハラが懲戒の対象にならないのは、全く片手落ちです。
もっと問題なのは、就業規則の改訂をどう周知するかという提案がありません。そもそも、経営者としてパワハラを許さないという方針表明をして社員に周知徹底しなければなりませんが、そのような考えは全く表明されませんでした。組合側からの問題提起で、就業規則にパワハラによる懲戒を追加すること、就業規則の周知徹底・研修の方法については、実施要綱を組合に改めて提案するということでひとまず決着がつきました。しかし、改めて社長の考えが透けてみえるようなやりとりでした。
現在の状態もパワハラ
引き続いて議論した、組合員の業務をどうするかという問題は、パワハラをどうするかという問題でもありました。組合員は、過去8年間業務に必要なパソコンを与えられませんでした。組合との交渉の中でやっと2年前からパソコンを与えられました。しかし、そのパソコンを使ってする仕事は、ほとんどありません。ひめじやは鎖と連結金具を販売する会社ですが、その内、金具在庫の出庫数をチェックするのが、主な組合員の仕事です。これは30分もあれば終わってしまいます。毎日毎日何もせず1日を過ごしています。他の社員が忙しく働いている横で。これこそパワハラの典型的類型「過小な要求」に他なりません。なぜ、そんなことになっているのか。
10年間のパワハラを否定せず
改めて10年間の会社の仕打ちを組合員が振り返りました。
終業後に、社長以下、営業事務社員と組合員の悪口の言い合い。組合員が座っている事務机の真向いや、対角に机が面している狭間に非常に不自然な紙を垂らして仕切りをして目隠しをする。事務所から倉庫に行くような社内を歩かせる仕事はさせない。新入社員には数日でさせる営業所と連絡を取り合う仕事もさせない。新入社員には数日でさせる宅配や郵便配達の受け取りはさせない。来客の手土産など、他の営業事務社員には配るが組合員には配らない、年末に他の営業事務社員には配る卓上カレンダーは組合員には配らない。雑談や空調のことなどでも、他の人には話しかけても組合員には尋ねたり話しかたことがない。電話はあるが、とらせない。人がおらず鳴り響いていても放置しても、とらせない。造花のほこりの雑巾がけ、玄関マットの取入れ、ポットのお湯捨て、排紙整理等侮辱だと感じる仕事を選んでさせる。給湯室にマグカップを置いていたら、他の人の物は集めて置き、組合員のマグカップだけ、いつも不自然に離して置いてある。他の従業員と会話することが出来ない雰囲気。実際に、世間話など雑談に加わったことは過去 10 年間で、一度もない。新しい複合機やシュレッダーの機械などの取り扱いの説明を受けさせてもらえない、など等。
社長にコメントを求めたが、社長は「コメント?」と言ったきり、一切しゃべりませんでした。
訴訟を通告
一言でもパワハラを認め謝罪する言葉があれば、違った展開になったかも知れません。
最後は、パワハラ・モラハラに対して裁判で闘うことを宣言して帰ってきました。